あなた「好きになれたって……思ってたの」
及川「うん」
あなた「でも、"好き"じゃ……足りなかった」
及川「恋愛の形は、人それぞれだからね」
あなた「私……また、傷付けた…………」
及川「誰も苦しまない恋なんて無いよ」
あなた「どうするのが……正しかったのかな」
及川「正解なんて無い。だから、あなたは何も……間違ってないよ」
徹くんに包まれて、胸元に頭を押し付けてからポツポツと出た私の言葉に、一言一言返してくれて。
及川「きっと眼鏡くんも……好きな子の1番になりたかったんだよ。俺もだけど」
あなた「うん…………」
及川「だからあなたは言われた通り、今まで通り接してあげなよ。あなたの本当の気持ちも、きっと分かるから」
あなた「うん…………」
徹くんの匂いが、落ち着く。
柔軟剤の香りかな……?心が安らぐ。
暫くの間ピッタリくっついて、落ち着いてきたところで離れて「ありがと」と伝えた。
徹くんはニコッと笑うと、私の頭を優しく撫でて。
及川「さて……それでは及川サン提案なんですが」
あなた「「提案」………?」
ズイッと近寄ってきた顔に身構えると、なんとも清々しい笑顔を私に向けた。
________そう、徹くんらしくもない"清々しい笑顔"を。
及川「俺に抱かr______」
あなた「あ、大丈夫デス」
及川「ちょっと!?まだ途中なんだけど!」
あなた「徹くんの屈託ない笑顔は危険だから!」
やっぱり……すぐチャラけるんだから!
及川「で、でもね!?気持ちいーコトしたら嫌な事忘r」
あなた「なになになになに服ん中手ぇ入れるな!」
ゴチンッ‼︎
及川「痛い!!!」
あなた「セクハラでお兄ちゃんに訴えるからね!?」
及川「岩ちゃんだけは勘弁……!!ちぇっ、俺なら満足させてあげられるのに……」
あなた「誰も求めてません。……ていうか、ラーメン食べに行ったんじゃなかったの?」
ゲンコツを喰らわした頭を撫でながら、首を横に振る徹くん。
及川「用事あるって嘘吐いたんだ〜。だからお腹ペコペコ!」
……私のために、してくれたってことだよね?
あなた「…………何か作ろうか?」
どうせ自分も食べるついでだから尋ねると、瞬く間に表情を輝かせた。
及川「食べる!!」
リクエストの麻婆豆腐を作ってから、2人向かい合って食事タイム。
徹くんとこうして2人で食べるのって……なんか新鮮。
及川「ん〜っおいしい!流石だねっ」
あなた「お粗末様で〜す」
徹くんのおかげで元気が出たのは間違いないし、幼馴染みって侮れないなって本当に思う。
及川「あなた、あーん」
……こういう所はいかがなものかと思いますが?
あなた「……自分で食べなよ」
緩み切った顔で口を開けるので箸を指さすけど、ニコニコするだけで閉じようとしない。
あなた「あのねぇ……」
及川「あ〜んっ」
あなた「…………………」
侑見てる気分……。
もう、調子いい奴。
あなた「一回だけだよ?」
今日のお礼も兼ねて渋々箸で持っていってあげると、なんとも幸せそうな顔でそれを頬張った。
及川「ん〜っ、久々にあなたとイチャイチャできて嬉しいっ」
あなた「よく言うよ先週朝勝手に布団入ってきたくせに!!」
岩泉「あ"?本当か」
及川「だって寒かったんだも〜ん…………って、え、岩ちゃん!!?」
あなた「!?」
言い合っているといつの間にか帰ってきていたお兄ちゃんが、腕を組んで仁王立ち。
……とっても怖い。
岩泉「及川……色々聞きてぇが今の話はなんだ」
及川「いやぁ〜…………テヘペロッ☆」
花巻「どっか埋めようぜ?」
松川「庭に出ろ」
物騒な話になってきた……。
とりあえず食べ終わってから、お兄ちゃん達は午後からまたゲームに没頭するというので一緒にする事になった。
あなた「あ……松川くん」
松川「……ん?」
あなた「LINEでも言ったけど、この間はほんとにありがとう……。風邪、移ってない?」
コントローラーを接続している間に改めてお礼を言うと、松川くんは少し間を置いてコホンと咳払い。
松川「移ってないよ。……多分」
あなた「え?」
松川「……なんでもない。でも、移ったら看病してくれる?」
あぐらをかいてコントローラーを持ち上げながら、顔を傾げた。
あなた「うんっ。勿論だよ!」
わざわざ学校まで迎えにきてくれたらしいしね……。
口角を上げた松川くんは、「あ、じゃあ」ともう一度私の顔を覗き込む。
松川「"俺がしたように"看病してね……?」
……?「俺がしたように」??
覚えてないけど……でも、看病失敗するとでも思われてるのかな?
あなた「大丈夫だよ!私看病上手いから!」
松川「……〜、あ、ハイ……//」
ギュッと握り拳を見せると、何故かほんのり頰を赤く染めた。
松川「(覚えてない……のか?//)」
・
岩泉「おいやるぞっ。早くボタン押せ」
花巻「俺ヨッシーにする〜」
ゲームの画面に切り替わったので、会話を中断してキャラを選択。
ピロリンッ♪
花巻「誰かLINEきてんぞ〜」
及川「俺じゃないよー」
あなた「……あ、私だ」
YouTube観ようと思ってマナーモード解除したの忘れてた……って、
あなた「……え?」
英?
文化祭か……。
岩泉「始めるぞ?」
あなた「ねぇ、週末文化祭なんだっけ?」
そういえばこの時期だった気がする。
行くつもりがなかったから覚えてないけど……。
尋ねるとハッとした顔を見合わせて、花巻くんがニヤッと笑った。
花巻「そうそう、今日誘おうと思ってたんだよ。来るだろ?」
あなた「え、いや……今年は遠慮しとこうかな……」
北川第一の大部分が青城に行ってるから、中学の時の同級生とはあまり会いたくない。
女の子で仲良かった人なんていないし……むしろ逆。
岩泉「来ねぇの?」
及川「俺ら最後の文化祭だよ〜?来てよぉ!」
あなた「えー……一緒に行く人いないし、」
花巻「俺らと回ればいいじゃん?」
及川「そうだよ!誰と回っても問題ないしね、もう!」
岩泉「??どういう意味だ?」
あなた「徹くん黙って。………うぅん、じゃあ……覗くだけ行こうかな」
流石に高校入っても突っかかってきたりはしないだろうし。
気持ち……切り替えるきっかけにもなりそうだしな。
……他校の文化祭で気持ち切り替えようとして失敗した事ばっかりだけど。
…………………"一緒に回る"??
私と……英が?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。