この数あるデート企画の中で、私が1番どうなる事かと心配しているのは。
間違いなく、この人。
_________なのに。
あなた「泊まりがけだなんて何が起こっちゃうの……?」
白布「おい声に出てる。」
あなた「んむぐぅ、」
キャリーバッグを片脇に新幹線乗り場で時間待ち中、ついつい溢れた言葉に顔を摘まれた。
恐る恐る隣を見上げると、相も変わらずの仏頂面の白布さん。
恐ろしいクジ運(?)。
もはや運なのか分からないけど……。
未だに、1番信じられない。
あの日白布さんが立つなんて思ってもなかった。
だって最初、あんなに嫌われてたのに……。
そりゃ、嫌いな相手にキスなんてしないだろうけど。
それでも、私の事を他の人達と同じように好いていてくれていたなんて知らなかった。
そう考えて今までの行動を振り返ると…………。
あなた「なんて不器用さ……、」
白布「口塞ぐぞ。」
プルルルルル、
〈間もなく、9:27分発_____〉
あなた「あ、これですねっ。」
白布「あぁ。」
到着した新幹線に乗り込み、席に座る。
移動時間は長いから、コンビニでお菓子やら買ってきたけど……。
こんな長時間白布さんと何を話せば、
いや、ここは不器用人白布さんの為にも私が会話の種を探して……!!
白布𝓈𝒾𝒹𝑒.°
寝た。
スースー寝息を立てて、無防備にこちらに傾いた頭。
微かに見えるその表情や、膝の上に乗せている手、もそもぞ動く肩。
本当に今、一緒にいるんだと実感しては窓の外を見遣って平静を保った。
あの人数の中で泊りがけのデートができるのは4人だけ。
まさか俺がその4人に入れるとは思わなかった。
コイツとしては……他の気心知れた相手の方がよかったんだろうな。
勝手に自己嫌悪に陥りながら、無防備にも安心し切った顔で眠っているその頭にそっと手を置いた。
憎たらしい。
いつもいつも俺の心を散々揺さぶりやがって。
……コイツが、戸惑って俺の事で頭がいっぱいになるにはどうすればいい。
いつもの俺じゃダメなことは明白。
それなら___________、
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
白布「おい。」
あなた「スー、スー……、」
白布「起きろ_______着くぞ、」
あなた「ん……ぅ、……?」
目を開けてすぐに、自分が新幹線に乗っていたことを思い出した。
次に把握したのは、自身の寝姿。
あなた「っわ……、!ごめんなさ、」
白布「…………。」
まさか白布さんの肩で熟睡してたとは……、
誤って、また悪態を吐かれるのだと覚悟を決めた。
なんて言われるんだろう……。
白布「別に謝らないでいい。よく眠れたか?」
あなた「、え……?」
さも当然のように発した言葉に、思わず聞き返してしまった。
白布さんは首を傾げて私と顔を見合わせ、スッとその手をこちらに伸ばす。
っ、鼻摘まれる……!
あなた「ッ、……〜、?」
白布「髪、乱れてる。」
あなた「は_____え、えぇ…………、!?//」
白布さんの肩にもたれていた方の横髪を掬うと、優しい手つきで整えて耳にかけてくれた。
その仕草も表情も、発言も。
全てが私の知っている白布さんではなくて、その戸惑いに心臓が飛び跳ねる。
な……何事、?
白布「ほら、降りる準備。そこスマホ忘れないようにな。」
こんな……こんな白布さん、知らない……。
まさか___________これは、
あなた「分かった夢だ、夢なんだ。」
白布「何馬鹿言ってんだ。」
あれ、現実だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。