第326話

‥たこ焼き‥
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2020/05/13 13:30
トサッ……



部室に入ってロッカーの前に荷物を置いてくれて、頭を下げた。



あなた「ありがとうございます……」


北「ええよ。こない重いのよぉ持っとったなぁ」



部室を閉めて、鍵をポケットにしまった北さんは「ほな行こか」と歩き始める。


うぅん……流されてるような気が…………。




北「てんとう虫ちゃん?……行くで?」


あなた「……………………はいっ」




まぁ、いっか。




北「どこ行きたい?校舎内なら侑がおるで」


あなた「侑は何やってるんですか?」


北「コスプレ喫茶いうやつや。よぉ分からんけど……」



コスプレ……。


メイドとかやってたら面白いけど流石にないよね。



あなた「えっと、治と倫くんは?」


北「あいつらは屋台やな。たこ焼きやったと思うで」


あなた「……たこ焼き」



思わずお腹を押さえた。


朝寝坊して、おにぎり1つしか食べてないから……。


こんな時間に食べたいって言ったら笑われるかな、と我慢しようとすると、北さんは微かに笑ってまた頭に手を置いた。




北「食いたいんやろ?……行くで」



幼い子供をあやすような仕草がくすぐったくて、でも北さんには、なんだか甘えれるような気がした。


角名「!こんにちは」



屋台は中庭で開かれていて、午前中なのに多くの人で賑わっていた。


北さんの後をついていって、食欲をそそるソースの匂いに鼻をひくつかせた。



……美味しそう。



北「たこ焼き2つええか?」


角名「2つ……?」



倫くんは私に気がついていないようなので下手に目立たないように、店の側面で剥がれかけているPOPを直しながら辺りを見渡した。


治は……いないなぁ。



角名「誰かと回ってるんですか?」


北「せやで」



ガサガサとビニル袋にパックを入れながら、倫くんの視線がこっちに移る。


1度手元に目を戻して、そしてもう1度こっちを見て、また手元に視線を移す。



2度瞬きをしてから、勢いよくこっちを凝視した。




角名「っ、あなた…………!!?」



すごい、生で初めて見た。


三度見……。



あなた「……あは。久しぶ、り……?」



連絡なしで来たことへの罪悪感と照れ臭さで、もじもじしながら笑うと手を止めたままこっちを見つめる。



角名「え、な……なん、え、?き……え?」



ものすごい取り乱し様に奥にいた女の子が気がついて、倫くんに声をかけた。


「角名くんどしたん?代わりにやろか?」




ドサドサドサッ……!!



あなた「!?」



倫くんがハッと我に返り、作業を再開しようとした瞬間。



後方での物が落ちる音に振り返った。




……同時に。



傾いた肩を勢いよく掴んで、引き寄せられて__。



私はすぐに、その主が誰だか悟った。



この匂いが、懐かしく感じる。







治「っ、なんでここおるんや…………あなた」






私の顔を確認して喉を動かし、驚きを隠せていない表情に笑ってしまった。






あなた「治……久しぶり!」

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