『抱き締めちゃ、ダメか……?』
あなた「だk__っ、ぅぇ……!?//」
今……今、抱き締めるって言った……の?
西谷先輩は、それでも尚苦しそうに顔を歪めた。
西谷「…………その沈黙は、いいってことか……?」
あなた「ぇ、ぃゃ……その、えと……」
触れられているところが熱い。
血が沸騰どころか蒸発しそうだ……。
あなた「~っ…………」
しどろもどろする私をまっすぐ見つめる先輩の目に、小さく頷いた。
首の後ろに回った手に、力が入る。
そのまま引き寄せられて____。
<~♪:*o>
あなた「!!!?」
西谷「!?」
私の携帯が、大音量でそれを妨げた。
あなた「ぁ……ごめん、なさい」
とりあえず画面を見てみると、
【着信中:お兄ちゃん】
……。
西谷「いいよ……出て」
スッと私から手を離し、顔を背けた。
あなた「…………もしもし」
岩泉<あなた!お前いつ帰ってくるんだ!!>
あなた「ん……もう少しで着くから……」
西谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「えぇっ!?いいよ!ほんとに……もう着くし、1人じゃないから……」
なんだ、今の……。
あなたを、無性に抱き締めたいって思った。
あの写真のやつらに触られたんなら、その分俺が触れたいって……。
なんだ、なんだこれ……!
分かんねぇ……。
あなた「うん……うん、ほんとに、迎え来なくて平気だから……だからカゲくんじゃないってば!……うん、了解。すぐ帰るから、うん__」
電話の対応に追われているあなたを見て、また視線を落とした。
……何なんだよ……この気持ち。
胸が……いってぇ……。
あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
迎えに行くって聞かないお兄ちゃんを何とか説得して、電話を切った。
あなた「すみません……」
頭を下げると、西谷先輩はぎこちない笑顔を私に向けた。
西谷「おぅ……!帰るか」
あなた「……」
そりゃ、当たり前か……。
でも心のどこかで、“抱き締めてほしい”つて、思っちゃった……。
こんなこと伝えたら、引かれるかな……。
あなた「私……もうすぐそこなので、ここで平気です」
これ以上一緒にいたら、どうにかなってしまいそうで。
キャリーバッグを受け取って、背を向けた。
あなた「……ありがとうございました」
震える声で、そう伝えると「おう……」と消え入りそうな声。
先輩は、私を「分かんない」って言ったけど……。
私の方が、先輩のこと分かんないよ……。
胸が苦しくて、何故か溢れてきそうな涙を堪えながら歩いた。
後ろの方で、先輩も歩き出した気配がした。
明日、ちゃんと話せるかな……。
タッ……タタッ
あなた「……?__っ!?」
不意に足音がすぐ近くに聞こえて、振り向いた。
ギュ……ッ
あなた「~っ!?//」
突然のことで、事態の把握に時間がかかった。
ただ、先輩の腕に包まれて、ギュっと強く抱き締められていた。
あなた「せんぱ……」
ギュゥゥ……
痛いほど、強く強く抱き締められる。
合わさった部分から、心臓の鼓動が伝わってきた。
2人のリズムがリンクして、重なる___。
しばらくして、
西谷「……わりぃ」
そう小さく囁いて、私を離した。
そして何がなんだか分からずに固まる私の額に、トンっと指を押し当てた。
西谷「___また、明日な」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。