二口「じゃあさ、俺と付き合って」
あなた「え、話聞いてた?グミより耳鼻科に__っ、」
あぁ、なにこの目。
さっきまで意地悪するときの目だったのに、なんか急に真剣になっちゃって……。
二口「話は聞いてた。てか、聞いてからやっぱりあなたと付き合いたいと思った」
あなた「……私、好きな人が」
二口「今日俺と過ごして楽しかったでしょ?」
あなた「いや、別に」
二口「じゃあ嫌だった?死ぬほど帰りたいと思った?」
あなた「……や、そこまでは」
まぁグミ食べさせられたときは病院行きたいと思ったけど……。
堅治は笑って、私の手をギュッと握った。
二口「なら、いいでしょ?ほら……こうして手繋いだらドキドキする」
あなた「……してないもん」
二口「してるよ……ほら、ね?」
堅治は私の手ごと自分の胸に押し当てて、鼓動を聴かせてきた。
堅治の鼓動が、手から伝わってきてリンクする。
二口「あなたは……ほんとにしてない?」
あなた「っ、……してな、くも、ない……」
二口「ははっ……ならいいでしょ?」
あなた「……よくないよ」
二口「どうして……?」
確かに、堅治と話すのも過ごすのも楽しくなかったと言えば嘘になる。
でもこれからもずっと一緒に居たいかと言われたら……分からない。
それに……。
あなた「私、好きな人がいるから」
やっぱり「付き合う?」と言われて1番に思い浮かんだのは西谷先輩だった。
私が一緒に居たいのは、どう足掻いても彼なんだ……。
堅治は私の手を握ったまま俯いて、そして顔を上げた。
少し、清々したような顔だった。
二口「分かった」
あなた「うん……ごめ__」
二口「なら、次会うときまでに考えといて?」
あなた「へ?」
え、私今振ったつもりだったんだけど……?
あなた「あの、だから私今好きな人が__」
二口「うん、でもそれは俺と今日会ったばかりだったからかもしれないでしょ?ちょっと時間おいてみれば、俺と一緒にいたいかも、って思うようになるかもしれない」
あなた「…………それは」
ならない、なんて言えなかった。
堅治のすがるような、少し哀しみを含んだその目を、直視する事ができなかった。
二口「連絡先交換しようよ。次会うときのために」
あなた「……どこの誰とも知らないのに、連絡先交換なんてできな」
堅治は私の手を自分の口元に持っていく。
チュ……
あなた「っ、!?」
二口「伊達工業2年の、二口堅治。……これでどう?」
伊達工……。
怖い人達の宝庫じゃん……。
半ば無理矢理携帯を出さされて、連絡先を交換させられた。
二口「あ、あなたはどこ校?」
あなた「…………烏野」
そう言うと、心なしか少し笑ったように見えた。
二口「なら、いけるわ」
あなた「?どういうこと?」
二口「烏野相手に負ける要素ないって意味」
……いや、どういうこと。
ポカンとした私の顔を見て笑うと、「駅まで送るよ」と席を立った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。