?「あなたっ」
あなた「……堅治」
なんだか試合後だし、少し気まずい。
堅治は厳しい表情で言った。
二口「今日は、負けたけど……次は負けないからな」
烏野をバカにしていたようにも見えたあの顔はもうどこにもなくて、悔しさと決意に満ちた顔で宣言した。
あなた「うん……次も負けないね」
そう答えると微笑して、そしてすぐに悪い笑顔を浮かべた。
二口「デートはお預けかぁ……残念」
あなた「……そもそも試合の結果でそういうの決めるのはちょっと」
二口「じゃ、今度は正式に申し込むわ」
こっちに近寄って、ポケットに入れていた片手を出して私の髪をサラっと掬った。
口元へ持っていって、唇を触れる__。
あなた「っ、……」
二口「これで顔赤くするあたり、俺にもまだチャンスあると思ってるから」
……答えにくい質問をするなぁ。
二口「あぁそれと、悔しいけど……」
あなた「?」
顔をパタパタと仰ぎながら視線を送ると、堅治は哀しそうに笑った。
二口「お前のヒーロー、くそかっこよかったよ」
あなた「~っ、……でしょっ!!」
烏養「半に出発だからな。バス乗り遅れるなよー」
トイレやなんやらの休憩時間になって、それぞれで動く。
トイレでも行こうかな……。
グイッ
あ、なんか最近引っ張られること多いなぁ……。
及川「あなた、ちょっと助けて!」
あなた「はぁ!?いや私半にはバス乗らないといけないから……」
及川「すぐ終わるから!!」
ということで強制的に連行されました。
あなた「……ストーカー?」
及川「そうそう」
なんでもしつこいストーカーがいるらしくて、追い払うのに力を貸してほしいとか。
あなた「別にそんなの私じゃなくても徹くんのファンの子この体育館内にめっちゃいるし……」
及川「あなたじゃないとだめなのっ!!」
……もう、仕方ないなぁ。
あなた「なにすればいいの?」
ため息混じりに言うと、目を輝かせて松川くんを呼んだ。
松川「ん?……お、あなたちゃんやほー」
あなた「やほ。……なんで松川くん?」
私の疑問に答えることなく、徹くんは松川くんに片手を差し出す。
及川「まっつん、ジャージプリーズ」
松川くんは顔をしかめて徹くんと私を交互に見た。
松川「お前……まじてやるのかよ」
……え、なに?嫌な予感しかしないよ?
あなた「あの……私やっぱり……」
及川「岩泉家に二言はありませんっ!」
松川「ごめんな……」
ズボッ
フワッと柔軟剤の香りがした。
なんで松川くんのジャージを着るの……?
そのまま外へと連行された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。