綾乃「ほぉ……つまり、セミナーで岡山から帰ってきたついでに部活の知り合いと遭遇して……」
椋樺「悪ふざけ(?)で取材に応じた、と」
あなた「うん……。ほんとついてない……」
さくら「(いや逆についてるでしょ)」
雑誌の記事についての説明を一通り終えてから、やっと理解してもらった。
真綾「あなたにその気はないの?」
あなた「えぇ?ないよそんなの!あったとしても皆悪ふざけだし……」
首を傾げるとなぜか苦笑されて、なにやら考え込んでいたさくらがポンっと手を叩いた。
さくら「あなた!シルバーウィーク空いてる!?」
あなた「へ……?部活は、休みだけど……」
隣で綾乃が、「あー、あれね」と頷いた。
なに……?
さくら「私の従姉妹が、丁度文化祭するの!従姉妹の家に泊まるんだけど良かったら一緒にいかない?」
真綾「うちら皆家族旅行とか部活の合宿とかでさ~」
文化祭か……。
うーん……でも、たまには家でゆっくりしたいしなぁ。
さくら「新しい出会い見つけるチャンスだよ!」
ギュッと手を握られて、あははとはぐらかした。
真綾たちにも押されて、結局行くことに。
さくらは前日の夕方に家を出るらしく、部活が遅くまである私は次の日の朝に出ることにした。
新幹線の券はついでに買ってくれるということで、とんとん拍子で話が進んでいく。
そして、シルバーウィーク目前。
真綾「あなた!いい男捕まえてきなよ!?」
あなた「ちょ、言い方……」
綾乃「そういえば、どこ行くんだっけ?」
あなた「……聞いてない」
そういえばまだ行き先を聞いてなかった。
向こうで落ち合うためにも、ちゃんと確認しないと……。
さくらを探して、新幹線の券を受け取ってから尋ねる。
すると____。
さくら「ありゃー、言ってなかったっけ。兵庫県なんだけど___」
…………んん?
綾乃「兵庫かぁ~。……あ、そういえばあなたのLINEのトプ画、神戸タワーじゃなかったっけ」
あなた「え……うん。えと、どこの高校、なの?」
まさか……ね?
そんな偶然、あるわけ____。
さくら「なんだっけな、狐……?えっと、美味しいやつ」
……美味しいやつ?
さくらはひとしきり頭を揺らして、ぶつぶつ言いながら考え込む。
あなた「…………稲荷崎じゃ、ないよね?」
待っていられずに先に聞いてしまった私に、さくらは心底驚いた顔で私を見た。
その反応に、あぁ……と確信した。
さくら「そう、そこ!!稲荷崎高校!!」
『春高で!!』
あんなにかっこいい別れ方したのに……。
再会、案外早かったな……。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!