第64話

‥珍しい‥
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2022/07/12 07:25
あなた「どうしたの?」


研磨「……試合の時、アドバイス、ありがと。」









詰まり詰まり繋げた言葉からは、人見知りの研磨くんの頑張りが伝わってきて、なんだかジーンとした。









あなた「あのね、研磨くんに聞きたいことがあって……、」


研磨「なに?」









今度はちゃんと、逃げずに目を合わせてくれた。









あなた「りんごが好きみたいだったから、作ろうかなって思って……聞けなかったからとりあえず作って、余ったら私が持って帰ればいいかなって思ったから……その、アップルパイ好きだったり、する?」










そのデザートの名前を発した瞬間、明らかに目の色が変わった。



ズイッと寄ってくるので思わず後ずさった。








あなた「え、えと……、」


研磨「あるの?デザート?アップルパイ?これ食べ終わったら食べれる?」











目をキラッキラッさせて聞いてくるその姿がとても可愛くて、子犬の尻尾が見えそうなほどの錯覚に陥った。









あなた「あるよっ。研磨くんがそれ残さず食べたら、デザートに出そうねっ。」











そう言うと、コクコクと頷いて足早に席に持っていく。




好きみたいで良かった……。








1度椅子に座ったと思ったら、立ち上がってこっちへ戻ってきた。








あなた「?」








   

研磨くんは私のエプロンの裾をキュッと掴むと、たじたじしながら言った。











研磨「……あなた、一緒に…………食べよ。」










っ、だから可愛いかよっ!!











あなた「うんっ食べる!自分のついでくるから先に食べてて~。」










微笑むと、ホッとしたように目尻を下げてコクりと頷いた。





皆がつぎ終わってから自分のを盛り付けて研磨くんの隣へ移動する。






研磨くんはウズウズしながら食べるのを待ってくれていた。










ガタンッ








お喋りしながら食べていると、黒尾さんが隣に移動してきた。






……邪魔しないで。










黒尾「研磨がなつくなんて珍し~どんな手使ったんだよ。


研磨「……クロ。変な言い方しないで。あなた、気にしなくていいから。


黒尾「あれぇ~ますます珍しい……まぁ、料理の腕は認めるけどな。」








言いながらパクパク口を進める。









あなた「そりゃあどうも。」


黒尾「あぁあと、食べ終わったら猫又監督のとこ行けよ。呼ばれてたから。」


あなた「そうなんですか?ありがとうございます。」


黒尾「俺はまだ認めた訳じゃねぇからな。」









そう言いながらも、おかわりするためにお皿を持って席を立った黒尾さんは、根っからの悪じゃあないんだろうな……。


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