菅原「ん〜っ、あなたの卵焼き最高!」
中庭のベンチに腰掛けて、ランチタイム。
菅原先輩はお返しにタコさんウインナーをくれて、やっと本題に入った。
菅原「んで、今朝の話なんだけど」
あなた「あ、はい……"彼女"の話ですよね?」
体育館使用の時間制限もあったから、今朝は最後まで話す事ができなかった。
「詳しいことは休み時間に」って言われたけど、まさかこうして一緒に食べる事になるとは……。
菅原「それがさぁ……今ウチにばぁちゃんが泊まってるんだけど」
あなた「おばあさんが……?」
もぐもぐと口を動かしてゴクリと飲み込むと、はぁ とため息をついた。
菅原「うちのばぁちゃん、自分が病気だって言い張るんだよ。実際病院でいろんな検査したけど特に何もなかったし……そこら辺の同年代の人達よりずぅっと元気なんだけどさ」
あなた「そうなんですか……」
菅原「でさ。「死ぬ前に孫の嫁だけはひと目見てから」って聞かなくて」
あなた「そうなんですk_____っ、嫁!!?」
菅原先輩のおばあさん……菅原先輩は18歳なりたてホヤホヤですよ??
菅原「しかも、「見るまで帰らない」って居座っちゃってさ。別に家にいるのは構わないんだけど、帰宅する度に「嫁」って連呼されて……」
お年頃の孫に「嫁」って連呼するおばあさんか……菅原先輩も大変だな。
菅原「結局、"候補"を連れてくるって事で納得してくれたんだけど……。もしお目に敵わなかったら、勝手に見つけてくるとか言い始めるし」
あ……もう同情しかないです。
菅原「俺だってちゃんと自分で選択したいし、それに好きな子居るのに勝手に決められるのは癪だ……」
あなた「…………、!?先輩、好きな人居るんですか!?」
菅原「え?……………っ、あ///」
ぽかんと口を開けてから、手で顔を隠した。
ビンゴだ。
菅原先輩に好きな人かぁ……!
清水先輩かな?仁花ちゃんかな?
いやいや、3年生の私の知らない誰かかもしれないし……。
菅原「お、俺の好きな子の話はいいんだよ!」
あなた「う〜ん……でも、"候補役"やってもらうならその好きな人に頼んだ方がよくないですか……?それを機に意識してくれるようになるかもしれないし!」
菅原「……あー……デスヨネ、」
先輩は前屈みになって顔を伏せ、「なんで分かんないかなぁ……」と呟いた。
……??
あなた「あ、もしかして相手の方に彼氏さんがいるとか……ですか?」
私、傷つくこと聞いちゃったんじゃ……。
菅原「いや……居ない、よね?」
あなた「いや、私に聞いてどうするんですか」
菅原先輩って結構抜けてるとこあるよね。
でも……そっか。
あなた「私、先輩にはいつも助けられてるしその好きな人と上手くいくように応援しますね!その人に頼めない理由があるなら私なりにおばあさんに認めてもらえるように頑張ります!」
菅原先輩のおばあさんに認めてもらわないと、元も子もないもんね。
菅原「……「応援」……してくれる?」
あなた「勿論ですよ!」
こんな風にあからさまに一喜一憂する先輩、なかなか見れない。
それだけその人のことが好きなんだろうなぁ。
あなた「本当に、好きなんですね。その人の事っ」
なんだか微笑ましく思って笑いかけると、顔を起こして私に近づけた。
瞳をじいっと見て、真面目な顔で。
菅原「うん……めっちゃ好き」
そう断言するので、何故かこっちが照れてしまった。
菅原先輩のギャップって恐ろしいよね。
あなた「ふふ……菅原先輩にそんなに想ってもらえるなんて、その人は幸せ者ですね!」
菅原「……っ、//あぁ…もう」
今度は耳まで真っ赤にしてまた顔を伏せる。
そんなに照れるくらい好きなのか……凄いなぁ。
あなた「ふふふ、先輩可愛いっ」
菅原「あのなぁ……/」
またため息をつくと、ズイッと顔を覗き込んできた。
まだほんのり赤い頬と、真剣な眼差しに飲まれそうになる。
菅原「……………覚えてろよっ//」
あなた「……へ?」
私……何か怒らせるような事しただろうか。
かくして週末_______青城の文化祭の次の日、私は菅原先輩の彼女__もとい"嫁候補"として、菅原家にお邪魔する事に決まった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!