……ふぅ、疲れた。
明日には帰るのかぁ……。
コンコンッ
お風呂から出て最後の荷物をまとめていると、誰かが来た。
まぁ誰かって言っても侑か治なんだけど……。
あなた「はーい」
ドアを開けると、立っていたのは侑。
髪から水が滴っていて、お風呂上がりなんだと分かった。
あなた「どした?」
侑はチラッと私の後方___まとめていた荷物を見て、また私に視線を戻した。
侑「ほんまに帰るん……?」
あなた「、帰る、よ……」
そんな子犬みたいな目で見られても……。
フワッ……
あなた「!!」
高い位置にあった侑の顔が、すぐ近くに。
私の肩に頭を埋めると、腰に手を回した。
侑「……帰らんといてや」
あなた「え……」
スゥ
あなた「っ、」
顔を動かした侑の、濡れた髪が頬をくすぐり吐息が耳にかかる。
侑「________くすぐったいんか?」
あなた「っっ、」
囁いたその声に、背筋がゾクッと震えた。
あなた「な……に、やめてよ……」
慌ててはねのけて後ずさると、侑はいつものように笑わずに、そのまま近寄ってくる。
あなた「っ、」
ベッドに足があたり、逃げ場がなくなった。
侑「掴まえたで……」
肩に手を置かれて、押し付けられた。
あなた「ちょ、嘘……待って、」
侑「待たれへん。今日までよぉ我慢した思うわ」
あなた「侑……」
私の腰の横に膝をついて、覆い被さる形で私を見据える。
目が……据わってる。
侑「自分……俺のこと兄貴かなんかやと思うとるやろ」
あなた「ど、どっちかって言うと弟だけど……」
ピクッと、頬をひきつらせた。
やばい怒らせた……!
侑「なぁ、どうや?弟に押し倒されて」
あなた「だって……冗談、でしょ?」
侑「……」
なんで、黙ってるの……?
侑「分かっとるやろ?俺やって男や……」
あなた「ん……」
再度耳元で囁いて、身をよじった私の足の間に膝をいれる。
侑「“そういうコト”に関しては……数段上なんやで……?」
侑の髪から滴った水が、私の頬に落ちて首筋につたう。
その経路が鮮明にわかるほど、体が熱い。
侑「なぁ……サムの部屋や思うと余計興奮するやろ」
あなた「し、ないから……やめて、よ」
侑「そない目ぇ潤ませたって……煽っとるようにしか思えんわ」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。