谷地「っ、あなたちゃん……なんか、増えて、る?」
あなた「あ、はは……うん、えっと」
やっぱり目立っちゃうよね……。
朝起きてすぐに鏡に確認しに行ったら、両側ともくっきりと赤い痕がついていた。
慌てて絆創膏を貼ったけど……逆に目立っちゃうかなぁ?
あなた「、仁花ちゃん、違うの。これは、蚊っ、蚊に刺されたの!蚊だからねっ!?」
谷地「わ、わ……う、うん蚊!蚊だよね!」
半ば強引かもしれないけど仁花ちゃんに説得して、自分にも言い聞かせた。
私は蚊に刺された……私は蚊に刺された……。
西谷「あなた~っ!はよっ!!」
1番に食堂に入ってきた西谷先輩が駆け寄ってきて、笑顔を作ってくるんっと振り返った。
あなた「おはようございます!西谷先輩っ」
あぁ……おはようとか、おはようとか……。
新婚さんかて……。
あ、悲しくなってくるからやめておこう。
西谷「今日もいい匂いするな!」
あなた「ありがとうございます!今日は親子丼ですよ~」
そう言うと、「おっしゃぁ!」とガッツポーズを作って「あ、でも……」とその手を緩めた。
西谷「あなたが作る料理なんでも美味いから、メニューはなんでも嬉しいぜ!!」
はい。昇天確定。
この人になら「馬鹿」って言われても嬉しい。
これが恋だよね、うん!
全く、徹くんも私を見習えばいいのに……。
いつも好きでもない女の子の告白承諾しては振られて……。
って、そんなことより西谷先輩!
あなた「______~っ、」
西谷先輩の背後からニョキっと現れたのは、目を細めた黒尾さん。
私が後ずさると楽しそうに近寄ってきた。
黒尾「絆創膏貼るの、禁止って言わなかったっけ~?………………っ、あ?おい。これなんだよ」
黒尾さんが一昨日付けた方じゃない、昨日月島くんに新たに付けられた方の絆創膏を指差して声を荒ぶらせた。
あなた「ど、どでっかい蚊が!」
黒尾「…………あぁーくそ、やっぱ置いてくんじゃなかったか……」
ぶつぶつ言いながら、耳元で囁いた。
黒尾「今日、お仕置きだからな」
あなた「っっっ、」
黒尾「フッ……そんな赤い顔、「西谷先輩」に見られて平気なのか?」
あなた「!」
慌てて西谷先輩を見ると、山本先輩と田中先輩となにやら話し込んでいるようで大丈夫そうだった。
よかった…………。
黒尾「……俺がここで大声だしてこの絆創膏剥がしてもいいんだけど?」
あなた「っ、なんでそんな意地悪するのさ!」
黒尾「楽しいからぁ~」
即答したそれは、大方予想内だった。
あなた「っ、とにかく私は_______っ」
ドンッ
距離をとろうと下がった瞬間、誰かにぶつかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!