ううぅ……涙が止まらない……!
玉ねぎを切ったあと涙が溢れて溢れて、煮込んでいる間もずっと流れていた。
人によって玉ねぎで目が痛くならない人もいるみたいだけど到底信じられないほど痛い。
1度、洗って来た方がいいですよ、という武田先生の助言で、廊下へ出るとすぐに。
倒れている田中先輩と西谷先輩を発見した。
あなた「っ!!?」
驚いていると菅原先輩が笑いながら歩み寄ってくる。
菅原「清水が帰っちゃうこと言ったらこれだよ~」
……あぁ。
そりゃあ、好きな人と一緒に泊まりたいよね。
当然のことだし、もちろん私もそうだ。
でも、やっぱり西谷先輩の好きな人は清水先輩なんだなぁ……と思うと胸が苦しくなって、泣きたくなった。
いつもは我慢できているのに、なぜか涙が出てくる。
あぁ、そっか。
これは玉ねぎのせいなんだ。
目、洗いに行こう……。
カレーを食べ終わると、清水先輩は家へと帰っていった。
田中先輩も西谷先輩も、泣いて別れを惜しんでいたけど「明日も会えるだろ」と縁下先輩に一喝されて引きずられていった。
私も1回部屋に戻って、お風呂に行く準備をしながらふと携帯を見る。
【不在着信】
お母さん 1件
お兄ちゃん 48件
徹くん 52件
数字から執念を感じる……。
うわぁ……と顔をしかめながらマナーモードを解除した瞬間、大音量で携帯が鳴った。
……徹くん。
お兄ちゃんよりはマシだと思い、電話をとった。
あなた「……もしもし?」
及川〈出た!出たよ!岩ちゃん~!!〉
電話の向こうからどたばたと走る音が聞こえてくる。
岩泉〈おいあなた!俺に何も言わずに合宿ってふざけんな!!〉
あなた「だ、だってお兄ちゃん絶対行かせてくれないでしょ!?」
岩泉〈当たり前だ!んな狼だらけのとこ……!今すぐ帰ってこい、いや迎えに行くから場所教えろ!!〉
あなた「狼って……!流石に部屋は別だし!絶対帰んないから!!」
?「あれ?隣の部屋誰かいるんですか?」
?「はぁ?俺ら以外泊まってるやつなんていないぞ」
?「でもなんか声が……」
ガララッ
扉を開けた田中先輩と、後ろからヒョコッと青い顔で覗いてくる日向。
バタンッ
……。
岩泉&及川〈〈っ、隣は絶対ダメだ!!!〉〉
あなた「あぁもう!!うるっさいなぁ!とな、隣じゃなくて隣は先生で……」
田中「武ちゃん~!マネージャーと選手隣の部屋なんて聞いてないぞ!!今夜は寝られねぇ!!」
岩泉〈寝られないぃ……!?〉
及川〈あなた今すぐ帰ってきなさい!!〉
あなた「田中先輩話ややこしくなるから黙っててください!!」
田中「…………ご、ごめんなさい」
しゅーんと縮こまってしまった田中先輩に、ハッとする。
あなた「ご、ごめ……そんな強く言うつもりは」
岩泉〈あなた今すぐそいつから離れろ!!危険人物だ!〉
あなた「妹が合宿行ったくらいで合計100件も電話かけ続けてくるあんたらの方が危険だわ!!」
喧嘩していると電話の向こうでお母さんの怒鳴る声が聞こえて、2人の怖がる姿が目に浮かぶ。
さすが岩泉家の般若……見習わなければ。
西谷「え!あなた部屋隣なのか!?夜トランプして遊ぼうぜ!」
あなた「っ!!」
及川〈あなた、ダメだよ部屋に入れちゃ絶対に____〉
ブチッ
西谷「あれ、電話中だったのか?」
あなた「いえっ!電話なんてしてませんよ!トランプしましょうしましょうっ!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!