山口𝓈𝒾𝒹𝑒.°
2日目。
やっぱり、ツッキーのことは気になる。
日向「折角梟谷のエースの人が練習誘ってんのに断ってんの!あぁ信じらんねぇ!!」
日向は、自主練の誘いを断ったツッキーを見てそう言った。
山口「日向、あのさ……日向なら、今のツッキーに何て言う?」
日向「えっ?」
山口「その……影山とか、谷地さんの時みたいに」
日向「なにも言わないけど」
え?
日向は俺の発言に、1拍置いてすぐに答えた。
日向「だって、月島はバレーやりたいのか分かんねぇんだもん。やりたくない奴に、「やろうぜぇ!」何て言っても仕方ないじゃん」
……確かに。
でも、でもツッキーは。
山口「ツッキーは…………バレーは嫌いじゃないはずなんだよ。そうじゃなきゃ烏野に来ない……」
視線を下ろした俺を見て、日向は芯の通った声で言った。
日向「山口は?山口なら、月島に何て言う?」
俺なら……?
俺は小学校の時、いじめられていた。
『カッコ悪っ』
ツッキーの言った台詞に救われて、バレーを始めた。
ツッキーは、お兄ちゃんの事があってから少し変わった。
でも高校に入って、日向達と関わって、ちょっとだけ、いい方に変わっていっていると思った。
でも、今のツッキーは……。
昨日だって、あなたちゃんと話してるのを聞いて、思った。
ついこの間、学校からの帰り道、俺は勇気を出してツッキーに聞いたんだ。
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山口「ねぇ、ツッキー……ツッキーはさ、あなたちゃんのこと、どう思う?」
月島「は?」
山口「ぅ……、あなたちゃんの事、好きなのかなぁって……」
ツッキーは顔をしかめて、いかにも不機嫌そうに答えた。
月島「誰があんな猿」
でもいつも冷静なツッキーのその反応こそが、答えだと分かった。
山口「俺、さ……あなたちゃんのこと気になってて……」
でも、ツッキーがそうなら、俺にはもう勝ち目なんてないんだと分かっていた。
月島「……あ、そう」
興味無さげに言うツッキー。
でも、少しだけ焦ったような顔をしたのを、俺は見逃さなかった。
山口「つ、ツッキーは仲良いし、敵わないなぁ……」
正直詮索のつもりだったんだ。
保険、みたいな。
月島「……たかが恋愛でしょ。それにあいつ、西谷さんしか見てないから。どうせ無理なんじゃない?」
……もし、本当にあなたちゃんに興味がないなら。
そんな風に辛そうには、言わないよね。
山口「そ、そうなの……?西谷先輩かぁ……。で、でもツッキーなら_______」
月島「山口。うるさい」
いつも言われるその台詞が、やっぱり暗い気持ちを含んでいるって、よく分かった。
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……よし。
山口「ツッキーーーーィィィィィィィ!!」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!