第403話

月島くんのバレー
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2020/07/19 10:31
医務室まで追いつくと、月島くんはこっちを振り向いて少し目を見開いた。



あなた「…………一緒に、居てもいい?」



そう尋ねると、何も言わずに空いた扉の中に入る。


……やっぱり、嫌だよね……。



月島「………………入りなよ」



小さく言われて、聞き逃さずに続けて入った。



医務室の先生からの治療を受けながら、月島くんは反対の手で私の手をキュッと握った。




月島「…………はぁ」



小さくため息をついて、目を閉じた。


多分、合宿の時の事を考えてる。


戻った時、自分がする事を考えてるんだ。









月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°



治療が終わり、指の状態を告げられた。


なんでもいい。試合に出られるなら、それでいい。




椅子から立とうとすると、いつの間にか握っていたあなたの手に力がこもった。




あなた「…………ほんとは」



月島「……?」



あなた「出て欲しくない……」



月島「……、」



あなた「けど、私、凄く…………」




目に薄らと涙を浮かべて、僕を見上げた。





あなた「月島のくんのバレーを、もっと見ていたい……!!」



月島「……!!」



あなた「見てたいの…………、」




そう言って俯く。



ああ、もう。



どうしてキミはこんなにも。




僕が欲しい言葉を、こんなによく理解しているんだ。



だからこんなにも、僕はキミに溺れている。





月島「……試合」



あなた「……」



月島「_______勝ってから存分に泣けよ」


 
あなた「〜っ、うん!」






小走りで体育館に戻り、入り口に立った。



まだ試合は続いているようだ。





トンッ





足を踏み出した僕の背中を、あなたが押した。






あなた「勝とう!!!絶対っ」




月島「_________うん」





もう振り返らずに、コートに戻った。





次話す時は、嬉し涙で溢れているように。



僕が今できる事を、するだけだ。







あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°




猛ダッシュでギャラリーに戻って、点を確認する。



14対15。





ギリギリだった……。




試合出たいアピールを受けた烏養コーチは、月島くんを入れると判断したみたい。




冴子「蛍は大丈夫?」


あなた「痛めたのは小指で、薬指に固定する処置をしてもらいましたっ。痛いのは何も変わってない、けど……でも、月島くんは、絶対出るから……」


滝ノ上「相当な痛さだろ……サーブすら打てるかどうか」


あなた「うん、でも…………。あの顔見たら、"出るな"なんて言えなかった」




月島くんが入るためにはこの局面を乗り切らないといけない。



向こうのピンサのジャンフロを沢村先輩が上げて、カゲくんのツーで同点。




あなた「ナイスカゲくん!!」





同時に成田先輩と月島くんが交代。




澤村「ここ踏ん張んぞ!!!」



「「「おぉ!!!」」」




旭先輩のサーブは大平さんが上げて、若くんのバックアタックに月島くんが反応。



バシュッ!
 

あなた「〜っ右手……!」




思わず目をしかめた私は、月島くんの表情を見て応援するしかないと思った。



いくら痛くても、それでも……戦いたいと思っている月島くんの意思を、尊重したいから。





月島「ワンタッチーーー!!!」



あなた「〜っナイスワンチー!!!!」




旭先輩が繋げて返し、若くんのスパイクにブロック2枚がついて西谷先輩が取る。



旭先輩のスパイクを工くんがレシーブ、再度若くんにトスが上がる。



白帯にかかったボールは後方は飛んで行き、西谷先輩が上げた。




あなた「ナイスレシーブ!!」



カゲくんのトスは田中先輩に上がり、月島くんの囮があって白鳥沢のコートに綺麗に刺さった。





……ブレイク!!

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