医務室まで追いつくと、月島くんはこっちを振り向いて少し目を見開いた。
あなた「…………一緒に、居てもいい?」
そう尋ねると、何も言わずに空いた扉の中に入る。
……やっぱり、嫌だよね……。
月島「………………入りなよ」
小さく言われて、聞き逃さずに続けて入った。
医務室の先生からの治療を受けながら、月島くんは反対の手で私の手をキュッと握った。
月島「…………はぁ」
小さくため息をついて、目を閉じた。
多分、合宿の時の事を考えてる。
戻った時、自分がする事を考えてるんだ。
月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°
治療が終わり、指の状態を告げられた。
なんでもいい。試合に出られるなら、それでいい。
椅子から立とうとすると、いつの間にか握っていたあなたの手に力がこもった。
あなた「…………ほんとは」
月島「……?」
あなた「出て欲しくない……」
月島「……、」
あなた「けど、私、凄く…………」
目に薄らと涙を浮かべて、僕を見上げた。
あなた「月島のくんのバレーを、もっと見ていたい……!!」
月島「……!!」
あなた「見てたいの…………、」
そう言って俯く。
ああ、もう。
どうしてキミはこんなにも。
僕が欲しい言葉を、こんなによく理解しているんだ。
だからこんなにも、僕はキミに溺れている。
月島「……試合」
あなた「……」
月島「_______勝ってから存分に泣けよ」
あなた「〜っ、うん!」
小走りで体育館に戻り、入り口に立った。
まだ試合は続いているようだ。
トンッ
足を踏み出した僕の背中を、あなたが押した。
あなた「勝とう!!!絶対っ」
月島「_________うん」
もう振り返らずに、コートに戻った。
次話す時は、嬉し涙で溢れているように。
僕が今できる事を、するだけだ。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
猛ダッシュでギャラリーに戻って、点を確認する。
14対15。
ギリギリだった……。
試合出たいアピールを受けた烏養コーチは、月島くんを入れると判断したみたい。
冴子「蛍は大丈夫?」
あなた「痛めたのは小指で、薬指に固定する処置をしてもらいましたっ。痛いのは何も変わってない、けど……でも、月島くんは、絶対出るから……」
滝ノ上「相当な痛さだろ……サーブすら打てるかどうか」
あなた「うん、でも…………。あの顔見たら、"出るな"なんて言えなかった」
月島くんが入るためにはこの局面を乗り切らないといけない。
向こうのピンサのジャンフロを沢村先輩が上げて、カゲくんのツーで同点。
あなた「ナイスカゲくん!!」
同時に成田先輩と月島くんが交代。
澤村「ここ踏ん張んぞ!!!」
「「「おぉ!!!」」」
旭先輩のサーブは大平さんが上げて、若くんのバックアタックに月島くんが反応。
バシュッ!
あなた「〜っ右手……!」
思わず目をしかめた私は、月島くんの表情を見て応援するしかないと思った。
いくら痛くても、それでも……戦いたいと思っている月島くんの意思を、尊重したいから。
月島「ワンタッチーーー!!!」
あなた「〜っナイスワンチー!!!!」
旭先輩が繋げて返し、若くんのスパイクにブロック2枚がついて西谷先輩が取る。
旭先輩のスパイクを工くんがレシーブ、再度若くんにトスが上がる。
白帯にかかったボールは後方は飛んで行き、西谷先輩が上げた。
あなた「ナイスレシーブ!!」
カゲくんのトスは田中先輩に上がり、月島くんの囮があって白鳥沢のコートに綺麗に刺さった。
……ブレイク!!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。