第106話

‥着けてて‥
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2020/03/24 04:04
第1試合。 

相手は常波。


公式練習に入るので私はギャラリーに上がろうとボールを集めた分だけ籠に入れた。


西谷「あなたっ」

あなた「っ、はい」


丁度ボールを集めてきた西宮先輩が、思い立ったように声をかけてきた。


西谷「これ、上の俺の荷物の中に入れといてくれねぇか」


そう言って、腕から外したのは見慣れたリストバンド。


ずっと、着けてるんだ……。


あなた「はいっ。……えと、荷物ってどれ__」

澤村「西谷ぁ始めるぞ~」


西谷「あぁわりぃ!あ、てかもうそれあなたが着けてて!頼んだ!!」


あなた「はい!」



……ん?



「着けてて」……?



えっ、これ私着けてていいの!?




やばいやばいやばいやばい今日めっちゃいい日絶対勝つわこれ。
上へ上がって見下ろしながら、西谷先輩を目で追う。

と、隣のコートを気にしている旭先輩に声をかけている。




その先、隣のコートには、伊達工。



……一応、観察しとこうかな。



フワッ……



視界に影が入った。


手元の手すりには、大きな手が両側に……。





?「だーれd」

あなた「徹くんだよね分かってる」

及川「ちょっと!!最後まで言わせてよ!何でそんなすぐ気づいちゃうのさ!」

あなた「ちょっと今見てるから邪魔しないで」



徹くんを追い払うと、少しして横に誰かが立った。



あなた「…………英」

国見「また、見てるの?」

あなた「うん……」

国見「お前の目って、ほんと厄介だよね」



普通に、話せていることが。

数日前の私には想像もつかなかっただろうなぁって、しみじみと思う。


入畑「あなた、練習試合振りだな」


さすがに監督さんにはちゃんと挨拶しないとと、声のした方を振り返って挨拶をした。


溝口「どこの高校見てたんだっ?」


目をキラキラさせて聞いてくる溝口コーチを不思議に思いながらコートを指差すと、「あぁ」と納得した。


入畑「伊達の鉄壁は有名だからな。それで?突破口は掴めたか」


……なんで監督まで楽しそうなんだろう。


あなた「まぁ、そこそこは……というか見た感じ、今の烏野なら充分戦えます」

岩泉「お前が言うならそうなんだろうな」



……私が言うからって、分からないのに。






とりあえず、初戦が始まる。


私に今できることは応援すること!



挨拶をする皆を見ながら、リストバンドにそっと触れた。

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