第1試合。
相手は常波。
公式練習に入るので私はギャラリーに上がろうとボールを集めた分だけ籠に入れた。
西谷「あなたっ」
あなた「っ、はい」
丁度ボールを集めてきた西宮先輩が、思い立ったように声をかけてきた。
西谷「これ、上の俺の荷物の中に入れといてくれねぇか」
そう言って、腕から外したのは見慣れたリストバンド。
ずっと、着けてるんだ……。
あなた「はいっ。……えと、荷物ってどれ__」
澤村「西谷ぁ始めるぞ~」
西谷「あぁわりぃ!あ、てかもうそれあなたが着けてて!頼んだ!!」
あなた「はい!」
……ん?
「着けてて」……?
えっ、これ私着けてていいの!?
やばいやばいやばいやばい今日めっちゃいい日絶対勝つわこれ。
上へ上がって見下ろしながら、西谷先輩を目で追う。
と、隣のコートを気にしている旭先輩に声をかけている。
その先、隣のコートには、伊達工。
……一応、観察しとこうかな。
フワッ……
視界に影が入った。
手元の手すりには、大きな手が両側に……。
?「だーれd」
あなた「徹くんだよね分かってる」
及川「ちょっと!!最後まで言わせてよ!何でそんなすぐ気づいちゃうのさ!」
あなた「ちょっと今見てるから邪魔しないで」
徹くんを追い払うと、少しして横に誰かが立った。
あなた「…………英」
国見「また、見てるの?」
あなた「うん……」
国見「お前の目って、ほんと厄介だよね」
普通に、話せていることが。
数日前の私には想像もつかなかっただろうなぁって、しみじみと思う。
入畑「あなた、練習試合振りだな」
さすがに監督さんにはちゃんと挨拶しないとと、声のした方を振り返って挨拶をした。
溝口「どこの高校見てたんだっ?」
目をキラキラさせて聞いてくる溝口コーチを不思議に思いながらコートを指差すと、「あぁ」と納得した。
入畑「伊達の鉄壁は有名だからな。それで?突破口は掴めたか」
……なんで監督まで楽しそうなんだろう。
あなた「まぁ、そこそこは……というか見た感じ、今の烏野なら充分戦えます」
岩泉「お前が言うならそうなんだろうな」
……私が言うからって、分からないのに。
とりあえず、初戦が始まる。
私に今できることは応援すること!
挨拶をする皆を見ながら、リストバンドにそっと触れた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。