第83話

‥ムカつく‥
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2020/03/21 00:36
体育館から出て、音駒の皆を見送る。

田中先輩と山本先輩はいつの間にか仲良くなってるし、犬岡くんと日向も擬音で盛り上がっている。


こんなに仲良くなれるなら初めから一緒に合宿すれば良かったのに……。


西谷「あなたっ!」

声をかけられ振り向くと、大好きな笑顔。

あなた「西谷先輩……」

西谷先輩は目をうるうるさせて、スッと手を伸ばしてきた。

ドキドキしながらその手を見つめる。



パチンッ


あなた「……痛ぅ」


え、なんで?


デコピンされる流れじゃなかったよね??


西谷「勝手に居なくなるなよっ。皆……てか俺、めっちゃ寂しかったんだぞ?」



少しだけ顔を赤くして、ムゥっとしてきた。



……烏野にも研磨くんに張る天然タラシがおりました。


あなた「っっ、ごめんなさいっ!」


頭を下げると、ニシシっと笑い、「分かればいいんだよっ」と頭を撫でてくれた。


きゅぅぅぅって、胸が締め付けられる。



あぁもう、好きだなぁ……。


猫又「岩泉」


声をかけられ我にかえり、勢いよく振り向いた。

両校の監督、コーチが揃っている。

直井「合宿中、岩泉を貸してくださりありがとうございました」

直井コーチが頭を下げる。


……私、どっち側に立てばいいの?

中間地点でおろおろしていると、猫又監督が烏養コーチに近寄った。


猫又「出来ることなら岩泉を連れて帰りたいものですがねぇ」


……この人はまた、本気と冗談の区別がつけにくい……。


烏養「そ、それはちょっと……」

苦笑する烏養コーチを見て、猫又監督は笑う。

そしてこっちを見た。

猫又「勿論気づいておるのだろうが……岩泉には才能がある。人をサポートする力は勿論だが、"見て"、"分析して"、そしてそれを踏まえて"戦略を練る"才能……」

あなた「ぇっ…………?」


いや、私にはそんな大それた才能なんかない。

否定しようとしたけど、直井コーチが首を横に振った。


猫又「慶心……お前もまた才能を見いだし育てる立場なら、するべきことは分かるだろう」


烏養コーチは私と、猫又監督、そして烏野の皆を交互に見て、「はい」と返事をした。


夜久「じゃ、あなたちゃん今日までありがとな!」

山本「俺はぁぁ、毎日連絡しますっぅ」

海「大変だっただろうけど、助かったよ」

犬岡「また唐揚げつくってねっ!」

研磨「……遊びに、来てよ……?」


一部答えにくいのもあったけど、笑顔で返事をした。


そして最後に、黒尾さん……。


黒尾さんは一歩出て私に近寄った。

黒尾「「にしのや先輩」って、あのリベロの奴だよな?」

あなた「っ、そう、だけど……?」


黒尾さんはふぅーん?と鼻を鳴らすと、思い出したように携帯を取り出した。



黒尾「……俺とも交換してくれるか?」

あなた「あ、交換してなかったんだっけ」


私も思い出して、連絡先を交換した。

画面を見ながら笑っていると、「なんだよ」と言われた。


あなた「ふふっ…………黒尾さんて、案外私のこと気に入ってるよね?」

冗談混じりに言った言葉に、黒尾さんは目を見開いて私を見下ろした。


そしてガシガシと首の後ろを掻いて、はぁっとため息をつく。



グイッと手を引かれた。





黒尾「____ムカつく」

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