キス……。
キスって……。
好きな人としかしたくない、とても。
いや、勿論音駒の皆は大好きだけどそういうんじゃなくて_______。
?「あったか?」
あなた「!?」
突然背後から声をかけられて、振り向いてから紙を後ろに隠した。
立っていたのは黒尾さんで、後ろに回した私の手を凝視する。
黒尾「見せろ」
あなた「や」
黒尾「……」
や、勿論見せないとどうにもならないんだけど、ここで見せたら変な空気になるでしょ絶対……。
あなた「っと、下降りよ……?そこで見せるから、」
黒尾「ここで俺に見せれない理由は?」
あなた「う……、なん、となく」
黒尾「いいから見せろ」
あなた「やだってばっ」
紙を取られそうになって部屋の中を逃げ回る。
どうしよう、破いちゃおうか……でもそれじゃあ皆に見せられないし……。
あなた「ほんとにっ、下で見せるから!」
黒尾「キャプテンとして先に見るっつってんの!いいから貸せって!」
あなた「いーーやーーだーー!」
黒尾「チッ……頑固か!」
グイッ
紙を持っている手首を掴まれて引き寄せられ、咄嗟に反対の手に持ち替えた。
届かないように後方に上げると、それを取ろうと前重心になった黒尾さんの重みで足元がぐらついて倒れ込んだ。
ドサッ
あなた「痛、ぅ……」
黒尾「あっぶね……」
床に打ち付けそうになった頭は黒尾さんの手でガッチリ守られて、拍子に私の手から離れた紙は床に付いている黒尾さんの手元に。
黒尾「……」
あなた「!ちょ、見ないd_____んむぐっ、」
顔に手を当てられて口を塞がれてしまい、抵抗する術なくその紙を見られてしまった。
黒尾「…………キス、ねぇ」
あなた「……、」
ほらもう、気まずい空気に______。
あなた「〜って、なになになに!?なんで顔近づけてんの!」
被せられた手を取られたかと思うと整った顔が近づいてきて、顔を思いっきり背けて反抗した。
黒尾「なにって……キスしねぇと出れねぇんだろ?」
あなた「え、そう、らしいけど……それでするのは、違うじゃん……」
黒尾「…………研磨ならいいのか?」
あなた「_________え?」
急に出てきた研磨くんの名前に、聞き返すと黒尾さんは不服そうな顔をした。
黒尾「さっき、俺じゃなくて研磨を選んだろ」
あなた「え、ゲーム……じゃん」
人生ゲームの事をここで持ち出されても……。
黒尾「知らねぇ。関係ないんだよ俺にとっては」
あなた「……っ、//」
つぅ……、と親指が下唇を這う。
その艶っぽい瞳と色気満載の仕草に鼓動が早くなって、どうやって引き離そうかよりもどうやって照れているのを隠そうかのほうが先立った。
黒尾「ゲームでは負けても……こっちで負ける気ねぇから」
頬に手を添えられた瞬間、派手な音とともに入ってきたのは他の皆だった。
夜久「黒尾確保ぉぉ!」
山本「うおおおお!!」
研磨「……あなた、大丈夫?」
あなた「ぇ、あ、うん……」
物凄い大騒ぎになってしまい、収集がつかなくなりそうだったので海さんの提案でリビングに再集合した。
海「そっか……で、この紙が所謂"お題"で、キスか」
「「「「「………………」」」」」
皆がシーンと静まってしまって、不穏な空気が流れる。
リエーフ「……?(つまり、)」
研磨「(この内の誰かが)」
夜久「(あなたと……)」
黒尾「(キスする)」
……え、なんか睨み合ってるし……どうしよう。
リエーフ「え、簡単な事じゃないですか!キスすれば出れるんですよね!!」
山本「馬鹿、それが簡単じゃねぇっつってんだよ」
リエーフくんは「なんでですか?」と立ち上がると、迷う事なく私に近づいて目の前に座った。
座ってもやっぱり背の高さは凄くて、私が見上げると朗らかに笑う。
リエーフ「あなたっ、俺とちゅーしよっ!」
「「「「「!!!?」」」」」
あなた「っ、!?」
そんなストレートに解決方法言われたって……。
ガシッ
両肩に手を添えられて、ウキウキした顔が近づいてきた。
あなた「ちょちょちょっ、」
夜久「おいリエーフふざけんな!山本手伝え!」
リエーフ「ええっ、なんで止めるんですかぁ!」
山本「お前ちょっとややこしくなるから黙ってr___っ、研磨お前なにしてんだよ!」
研磨「……あなた、目ぇ瞑って」
あなた「え、なん、で……」
研磨「大丈夫。すぐ終わる」
黒尾「研磨ぁ〜、柄になく焦ってんじゃん」
グイッ
研磨「……別に。あなたの手離してよ」
グイッ
あなた「ちょ、引っ張らないで……)
リエーフ「俺も!!俺もちゅーする!」
夜久「うわっ、おいリエーフ暴れんな!!!」
山本「ぅわっ、誰だよこんなとこにバナナの皮おいたn_____、」
ドタドタドタッ!!!
すてんっと綺麗に転んだ山本先輩に続いて、夜久さんやリエーフくんたちが私たちに覆いかぶさる形で倒れ込んだ。
あなた「…………、?」
きゅっと目を瞑った私は、衝撃がこなかった事に違和感を覚えて目を開けた。
目の前には黒尾さんの厚い胸板があって、守ってくれたんだと分かった。
山本「痛ぅ……、すんません皆さん……!」
海「おい、大丈夫か?」
犬岡「結構派手にやりましたねぇ〜」
苦笑しながらも駆け寄ってきてくれて、1人1人が立ち上が______、る……?
黒尾「え、まじか」
研磨「……」(パシャッ)
私たちの目には、倒れ込んだ拍子にリエーフくんが押し倒す形になった夜久さんと、その頬に触れるリエーフくんの唇。
本人たちが固まってしまったようで動いていない。
数秒して、パチパチと瞬きをした夜久さんがリエーフくんを突き飛ばした。
夜久「ぅおええええっ、どこに需要あんだよ!!」
リエーフ「ははっ、ほっぺにちゅーしちゃいましたねぇ」
夜久「わざわざ言うな馬鹿リエーフ!!//」
双葉〈ういっ、達成!ミッション達成お疲れ様ぁ〜。いやぁ、まさか同性でクリアするとは思わなかったよ!お疲れ様皆〜っ。玄関の鍵は開けてあります!それでは解散ですお疲れ様でーす!〉
やっぱりこの人の声。
どこの誰だか分からないない声に皆首を傾げて、「ミッション達成」という言葉に思わず2人に視線を送った。
黒尾「ぶぁっはははは!!!!まじかお前ら!!期待裏切んねぇな!!」
夜久「ぅるせぇ黒尾!!一生呪うぞ!!」
リエーフ「あはは〜開きましたね!じゃあお腹空いたんで焼肉いきましょう!」
リエーフくん切り替え早いな。
玄関に向かって、ちゃんと開いた事に感動してから、外に足を踏み出していく。
黒尾「あ、なぁ」
あなた「?なに_______」
チュ、
あなた「_________〜っ、!!?///」
振り返った瞬間唇の、ギリギリ端の方に触れた柔らかい感触。
黒尾さんはぺろっとその形の良い唇を舐めると、悪戯っ子みたいに笑った。
黒尾「今度は……ちゃんとした"キス"するからな」
あなた「〜っ、知らない!!////」
不覚にもドキッとしてしまい、隠すように顔を背けた。
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ほんとは音駒とキスさせたかった……けど選べなかった←
☆終了☆
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。