球技大会に向けて、部活で西谷先輩、澤村先輩にレシーブを。
スパイクは旭先輩に教えてもらいながらセッターをする月島くんと合わせて、サーブをカゲくんに見てもらい。
確実に技術が身に付いてきた。
それに、こうしてバレーをする側となってみると、普段の練習を見る目も少し変わった。
家に帰ってからは事情は話さずにお兄ちゃんと徹くんに練習に付き合ってもらって、そしていよいよ球技大会当日がやってきた。
私のチームは、月島くん、山口くん、真綾、野球部の男の子、それからバスケ部の女の子がメンバー。
真綾はクラスでも運動ができる方だし、バドミントン部なので瞬発力もある。
大丈夫……。
充分優勝は狙える……。
他の学年とも試合で当たるけど、女子バレー部の先輩たちは違う競技を選択したらしく居なかったし、菅原先輩の居るチームと当たったけど難なく勝てた。
菅原先輩が計らってくれたのかもしれないけど、とりあえず私たちは順当に決勝へと駒を進めた。
真綾「いよいよだね……」
あなた「…………うん」
早く試合が終わって、決勝で対戦するチームの試合を観戦する。
やっぱり元バレー部だけあって なかなかうまい。
特に椋樺はレシーブもスパイクもサーブも凄まじい。
本当に勝てるのかな……。
点差をつけて勝利し、笑顔でハイタッチをしているあの3人を見ているとやっぱり不安に包まれた。
決勝戦が始まる________。
放送で召集されギャラリーから降りようと階段へ進んでいると、前を歩いていた月島くんがピタッと止まった。
あなた「…………どうし」
クルッと振り返った月島くんの両手が、私の頬をプニッ摘まんだ。
あなた「…………ふひひはふ?」
ぐにぐに引っ張られて名前すら呼べない。
……なになになに!?
月島くんはされるがままに変形する私の口元を見て唇を吊り上げた。
離させて頬を撫でる。
あなた「なに変顔させて楽しんでの!!」
月島「やっと上向いた」
あなた「え?」
上?
月島「さっきから下ばっか見て気持ち悪い。キミがナイーブになるのとかマジで勘弁てしてよね」
…………下、
そっか。
あなた「……ありがとう」
月島「はぁ?」
あなた「うん、そうだよね!私らしくない!月島くん、私頑張るよ!いいトス寄越してね!」
月島「…………まぁ、ここまできたら優勝すればいいんじゃない」
前を向き直して歩き出した月島くんの耳は、ほんのり赤かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!