第298話

‥ひとり言‥
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2020/05/05 11:58
田中「うっっがぁぁぁ!終わらねぇ!!」



夏休みが終わる前日。


バレー部皆で__宿題お終わってない者+その他愉快な仲間たちとで、部室に集まった。




縁下「田中も西谷も、あと現代文だけだろ~?ほらちゃっちゃとやる!田中答え見ない!!」





答えを没収されて涙目になる田中先輩を見ながら笑っていると、目の前の澤村先輩からチョップを喰らった。



澤村「集中!お前が1番終わってないだろ!」



あなた「うぅ~……」



……そう。




試合が終わって宿題について思い出し、お盆の間に進めていくつもりだったんだけど……。



さっき買ってきたファンタのペットボトルを開けながら、悔やんだ。






西谷「なんだよこれ……。つまり紀夫は、この麦わら帽子の女の子に“一目惚れ”したってことか……?」



『一目惚れ、だったんだ』





あなた「ぅごふぅっ……!!ごほっ、ごほん!」



菅原「だ、大丈夫か!」



……やばい。



自分でも思ってた以上に意識してる。




あの後、工くんはすっごい謝ってから、走って帰っていってしまった。


ただ、「一目惚れ」という私にとって無縁だった言葉と、抱き締められた微かな温もりを残して。





あなた「すみません……平気ですっ」



噎せた私の背中をさすってくれた菅原先輩にお礼を言ってから、また宿題に取りかかった。






田中&西谷「終わったぁぁぁ!」



残すところ一教科。



最後の科目……数学に取りかかろうとしたところで、2人が両手を上げて叫んだ。



くそ……追いつけなかった……。



とりあえず……こんなに終わったしな。



田中「今日掃除当番なんだよ!先帰るわ!!」



大急ぎで荷物をまとめた田中先輩が、挨拶して急ぎ足で帰っていった。



それに続いてどんどん帰る人が増えていく。



澤村「どうする、あとは家でやるか?」


あなた「あ……ちょっと残ってやってていいですか?鍵は返しておくので……」



家に帰ったらどうせ徹くんがいるだろうし、宿題も手につかないだろう。


学校という場所にいるだけで、少しモチベーションが高まるんだ。



……というのは建前で、少し1人になりたかった。


考えたかった。


あのまま、工くんとは会っていないし連絡もとってない。



本当に、このままでいいのか____。




澤村「そうか……?んじゃ、先帰るぞ」



残ってくれていた澤村先輩、菅原先輩、そして荷物を片付けていた縁下先輩と西谷先輩が、一気に出ていった。



見送ってから、足を崩す。





あなた「……はぁ」




工くん……。



数学のワークの、最初の方のページは基礎問題で比較的簡単だ。



この基礎の範囲が終わるまで、じっくり考えられる。





あなた「はぁ…………一目惚れ、かぁ」





ギィィ……




頬杖をついて嘆息を漏らしたと同時に、扉が開いた。




もう皆帰ったはず……誰?




控えめに開いた扉から入ってきたのは……。













西谷「よぉ」






先に帰ったはずの、西谷先輩だった。

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