「おっせーおせおせおせおせ青城!!」
会場に青城応援団の声援が飛び交う中、私達烏野は体育館に足を踏み入れた。
既にお兄ちゃんたちはアップをとっていて、私たちの気配がしてすぐにこっちに振り向く。
……リベンジだ!
・
私はアップを見ながら、カゲくんの様子を気にしていた。
胸が痛い。
影山「っ!」
弾いてしまったボールがコロコロと転がっていくので、追いかけた。
あなた「っとと、」
他の飛んできたボールに弾かれて、またもや遠くに。
ヒョイっと拾い上げたのは徹くんだった。
あなた「……あ、ありがと」
どんな顔をしていいのか分からなくて目をそらし、ボールを受け取ろうと手を伸ばした。
あなた「……?」
一向に離してくれないボールから目を離し、徹くんを見上げると真っ直ぐに私を見つめていた。
及川「覚えてるよね……?この試合終わったら、俺の話聞いてくれるって」
あなた「……?うん、覚えてるよ」
この間の話だろう。
どちらにせよ家には来るだろうし話す事に変わりはないけどと思いながらボールを引き剥がそうとすると手首を掴まれた。
あなた「っ、なに_____」
グイッ
あなた「!?カゲくん……!?」
反対方向に引っ張られた私は左右に挟まれて身動きが取れなくなる。
両手を掴まれてグイグイ両側から引っ張られるのでおどおどしていると、徹くんはふんっと鼻を鳴らした。
及川「これはこれは……前回俺にコテンパンにやられた飛雄ちゃんじゃないですかっ」
影山「今回は勝ちに来ました……!!」
あなた「えっ、痛い痛い!離してって!」
及川「お前は前回完膚無きまでに凹ましたからな!残すは牛若野郎ただ1人……!今回“も”退いてもらうぜっ飛雄〜っ!!!」
カゲくん側に回り込んで私のもう片方の手を取り、グイッと寄せる。
その拍子にカゲくんはステンっと転んでしまい、反動で私は徹くんの腕の中へ。
及川「わぁ〜っはっはっは!!」
あなた「カゲくん……っ!」
岩泉「及川離せこのクソ川ぁぁぁぁ!!」
及川「痛いっ!!!」
お兄ちゃんが飛んできてくれて、すぐに解放された私はボールを再度拾い直してため息をついた。
花巻「災難だなぁ〜」
ケラケラ笑って指差してきた花巻くんに、「ほんとだよ」と返して微笑んだ。
花巻「あれで一応高3だもんな」
あなた「もう2、3年やった方がいいねっ」
ニシシと笑って、隣の松川くんに手を振ってからやっとのことで烏野側に帰ろうと足を踏み出した。
国見「あなた」
あなた「……英」
ボールを片手に話しかけてきたので立ち止まると、英はまだうだうだやってるお兄ちゃん達の方をチラッと見て
国見「……及川さん達しか、応援しないの?」
と唇を尖らせた。
あなた「……応援して欲しいの?」
国見「……別に、そういう訳じゃ_____……してくれたら、嬉しい」
否定しようとしていたのに濁らせて、ようやく素直になった思春期の男の子のように頬を赤らめた。
あなた「……うん、“見てるね”」
軽はずみに「応援する」なんて言えなかった。
私の逃げの言葉に、英はコクリと小さく頷いた。
あなた「金田一は?元気?」
国見「あー、あそこいるよ」
指差されて見ると、矢巾さんと何やら烏野の練習を見て話している。
なに話してるんだろう……?
と、矢巾さんはボールを仁花ちゃんの居る方に軽く転がした。
なにやってるの……?
矢巾「すみません。取って、ください_____」
ドガッ
花巻「やべっ、危ないです!」
そこへ流れ弾が飛んでいく。
仁花ちゃんに一直線に向かっていくので思わず足を動かすと、その前に清水先輩が阻止してくれた。
田中先輩からボールを受け取った矢巾さんは金田一のところへ戻る。
いや……ほんとになにやってるの?
金田一「矢巾さんって、ほんとチャラいっすね」
矢巾「うるっせぇ!ほら、さっさとウォームアップやるぞ!_____っ痛ぅ!」
踵を返して練習に行く矢巾さんは、背後にいた賢太郎くんにぶつかって派手に尻餅をついた。
賢太郎くんは転んだ矢巾さんをジーっと見下した後、「ごめん」も「大丈夫?」も言わずに迷うことなくこっちに向かってきた。
京谷「……おぅ」
あなた「こないだ振りだね……!」
ぶつかっていた事について何か言おうと思ったけど、これは青城の問題だしやめておいた。
京谷「ちゃんと見とけよ」
あなた「……?」
京谷「“心臓に響くバレー”見せてやる」
あなた「……!」
昔_____と言っても中3の時。
賢太郎くんのバレーをそういう風に評したことがある。
不思議と懐かしく感じて、「うんっ!」と返してようやく烏野コートに戻った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。