あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
「あ……侑……」
侑さん……私の事忘れてるのかと思った……。
侑「触んなや」
「は……この子なんなん?」
「侑くんの知り合い……?」
侑「せや。ちょっかい出すなや?」
「っ、そのジャージ……バレー部のとちゃうん!?」
あなた「ぁっ……」
脱いでくれば良かった……。
侑「……」
ジトーッとした目で見てくる。
ごめんなさい……。
目で訴えると、伝わったかはともかくとしてふぅっとため息をついた。
侑「せや。うちのマネージャー」
「!侑くん、マネージャーはとってないゆーてたやんか!」
「どういうこと!?誰なんこの子!」
あれ……なんか、悪化してない?
というか、侑さんの顔がどんどん苛立っていってるような……。
侑「______喧しいわ。豚共が」
なんですと。
侑さんに睨まれた女の子達は肩を震わせて走り去っていき、残った男の子達もいつの間にか居なくなっていた。
侑「ほんで……自分なんしにここ来たん?」
少し機嫌悪そうに首の後ろに手を当てる。
あなた「あ……お弁当を届けに来て」
侑「っ!!…………そ…………っ、い……お、おおきに」
何か言いたげだったけどお弁当を素直に受け取ってくれた。
治「弁当届けるためだけに来てくれたん?」
あなた「あ……どうせセミナーも休みだったんで」
侑「さよか」
あなた「そしたら私、帰りますね」
ガシッ
侑「待ちぃや」
視線も痛いし退散したいところだけど、侑さんに腕を掴まれた。
あなた「……えっと?」
侑「このまま帰ってもろたら困る」
あなた「え?」
侑「見ぃ」
クイっと顎を向けられ、教室中の視線を集めていることを再確認した。
侑「自分今俺らのマネージャーやねん。おってもらわな筋が通らんやろ」
あなた「あ……そっか」
そう……なのか?
とりあえず椅子を引いてくれたのでそこに腰かけて、すでにお弁当に手をつけている治くんを見た。
治「んま」
あなた「よかったです……」
エビフライを口に咥えてグッドサインを送ってくる治さん。
ちょっと可愛い、かも……?
侑「にしてもまさかそのジャージ着てくるとはなぁ」
あなた「優子さんに着せられて……」
治「……それ、どっちのや?」
あなた「さぁ……?名前とか書いてるんですか?」
侑「書いとるわけないやろっ」
治「ちょお、来ぃ」
手招きされて、椅子から立ち上がって近寄ると手首を掴まれた。
グイッ
あなた「わっ」
前屈みになったのを、治さんはくんくんと鼻を効かせた。
近……!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。