第111話

‥ぶち抜け!!‥
48,630
2020/03/24 12:31
1セット目。



やはり鉄壁の名は伊達ではない。(伊達工だけに)



相手は1回戦通りリードブロックを徹底している。



旭先輩も止められてしまう。




それでもきっと、きっと大丈夫。




烏養コーチに渡したノートにも書いたけど、烏野には、最強の囮がいるんだから。






今大会で初めて、カゲくんと日向は変人速攻を使った。




サーブレシーブと同時に走り出した日向には、どんなに精密で高さのあるなリードブロックでさえ初見では追い付けない。




ドゴゴッ








一瞬の静止の後、一気に盛り上がる会場。





レシーブを乱れても、どんな位置からでも針に糸を通すような精密さのカゲくんならトスを上げることができる。





たまらず相手がタイムアウトをとった。





よしっ、いい調子だ!




?「おせぇよ!!試合終わってたらどーすんだよ!」


?「だって珍しくと客が来てぇ」


ドタドタと応援しに来てくれたのは、町内会チームの2人だった。



嶋田「あ、あなたちゃん!」


あなた「こんにちは嶋田さん、滝ノ上さん!勝ってますよ烏野っ!」


滝ノ上「みたいだなぁすげぇ!」



その後女子バレー部の先輩達も応援に来てくれて、伊達工とまではいかないけど烏野応援団が出来上がった。




少しずつ日向の動きについてくるようになった眉なし7番さんだけど、ブロックされたボールを西谷先輩がレシーブする。



音駒のやっていたパイプも成功し、旭先輩も点が決まるようになってきた。



25対19で、1セット目を先取した。


2セット目も日向の囮が機能する。



日向の速攻でマッチポイント。





あなた「あと1点~っ!!」


嶋田「ここで日向が後衛か……」


滝ノ上「7番は前衛……」



確かに一見不利な状況だけど……。




直後、前衛の旭先輩のスパイクが3枚ブロックに弾き返された。



っまずい、後ろはがら空き___。


キュキュッ


あなた「っ、ナイスレシーブ!!」



西谷先輩が上げて見せた。


有言実行だ。



東峰「もう1本!!」



トスを呼んだ旭先輩を確認して、西谷先輩はブロックフォローに入る。


ネット近くに飛んだボールを、7番と旭先輩が押し合う。





あなた「っ、落ちる…………っ」




構えていた西谷先輩の横へ、落ちていく。




ドムッ




あなた「えっ……!?」



間に合わないと思われたボールは、瞬時に出した西谷先輩の足によって上げられた。



「足ぃぃぃ!!?」



会場がどよめく。






やばい。





この人のレシーブは、いつだって私を……いや、周りの皆を魅了する。




西谷「もう1回!!」



「「もう1回!!!」」



東峰「決まるまでだっ!!!」





カゲくんが上げたボールは、以前菅原先輩に教えてもらっていた旭先輩の得意なトス。





充分な助走距離から足を動かす。




菅原「いけ!旭!!」

澤村「ぶち抜け!旭!!!」


「「いけぇぇぇぇ!!!」」




ドゴゴゴッ




今日1番の派手な音。



ボールは弾かれ、ネットの方へ飛んでいく。





白帯の上を転がり落ちた先は、伊達工のコートだった。





ブロック直後に拾いに走った堅治の手は、ボールにあと少し届かなかった。

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