キュッ……キュッ……
ドゴッ
「ナイスキー!」
「ナイスレシーブ!!」
おわっ、バレーだ!バレーやってる!!
そりゃあバレー部の体育館なんだから当たり前だけど……。
あなた「……」
控えめに覗いて中を見渡すけど、侑さんも治さんも見当たらない。
?「どうかしました?」
あなた「!」
こんなに小さな隙間から覗いてるのに、気がつくなんて……。
リエーフくんみたいな銀髪に、毛先が黒い。
リエーフくんとカゲくんと研磨くんを足したのを2乗してめっちゃ割った感じ。
……よく分かんなくなってきた。
あなた「あの……侑さんいますか?」
?「侑……?……あぁ、補習やけど」
補習……?
そんなこと言ってなかったけど……。
あなた「部活には来られるんですか?」
?「来るで。午後からやけどな。どうしたん?」
あなた「あの……お弁当預けてもいいですか?」
?「……新しいパターンやな」
あなた「??」
新しいパターン、とは?
?「あいつら教室で食べてくるけん、悪いけど持ってってもらえるか?」
あなた「分かりました……補習ってどこで?」
?「北棟の第5や」
あなた「ありがとうございます!」
?「ほならな」
親切な人のお陰で場所がわかった。
よし、行くぞ!!
・
・
?「ちゃんと教えるんやな」
?「俺が止めたところで意味ないしな。それに侑ファンとはちゃう感じしたし……」
ガララッ
あなた「あのぅ……」
・
・
?「どないした?」
あなた「……北棟って、どこでしょうか……?」
?「……自分、うちの学校とちゃうん?」
あぁ、恥ずかしい……。
?「しゃあない、案内したるわ。そこで待ちぃ」
あなた「すみません……」
反対側の扉から出てきたその人は、私の着ているジャージを見て目を見開いた。
?「それ……誰のなん?」
あなた「え?……侑さんか治さんだと思うんですけど」
?「……ストーカーなん?」
あなた「なっ……違いますよっ」
?「ほならなんでバレー部のジャージなんか……」
あなた「!!これ、バレー部のジャージだったんですか!?」
?「……あかん、混乱してきたわ。ちゃんと教えてくれへん?」
額に手を当てるので、とりあえず謝って事の一端を話した。
最後まで話す頃には補習をしている教室に着いていた。
?「なるほどな……ほなら、まぁ弁当届けたってや。そろそろ補習終わる頃やと思うし……」
あなた「はい!ありがとうございましたっ……あの、お名前お聞きしてもよろしいですか?」
?「あぁ、言ってへんかったな」
立ち去ろうとしたのをくるんと回って向き合い、しっかりと目を合わせる。
?「北信介や。一応男バレの主将」
あなた「っ!!すみませんお時間とらせてしまって……主将さんだったんですねっ、」
よりによって部に欠かせない人連れてきちゃったよ私のバカ!!!
勢いよく頭を下げた私に、「んー」と頬を掻いた。
北「俺がしたことやし、気にせんでええよ」
あなた「っっ、ほんとに……ありがとうございます……」
再度頭を下げてチラッと上を見上げると、なぜかすぐ近くに顔があって後ずさった。
北「なんもせぇへんよ」
すっと伸ばした手が、私の髪に触れる。
あなた「っ、」
思わず目を瞑って、手が離れていってから開けるとその手には一匹のてんとう虫が。
あなた「ぁ……」
取ってくれたんだ……。
今朝の事もあったしちょっと変な思考回路になっていた自分の顔を手で覆って恥ずかしさに耐える。
北「ふっ」
あなた「……?」
さっきまでずっと無表情だったのに、笑ったような声がして顔を見るけど元の能面に戻っている。
北「自分、小動物みたいやなぁ。……怖がらんでもええよ」
無表情、のはずなのにどこか優しさを含んだその顔で頭にポンッと手を伸せて、「ほなら、頑張りや」と去っていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。