第41話

‥大丈夫‥
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2022/02/16 17:23
澤村「それで、賭けに乗ったと」


あなた「……すみません。私1人で決めていいことじゃないのに……」





本当に部活を辞めることになるのなら、早めに先輩達に伝えた方がいいと思い部活の直前に聞いてもらった。





菅原「友達、大切なんだよな」





ポンッと頭に手を置かれて、今までは大丈夫だったのに涙が溢れてきた。


そんな私を見ておろおろする東峰先輩に、少し気が緩んだ。





澤村「さて……俺達は当然辞めてほしくないんだが……」


東峰「け、経験者はハンデとかないのかな?」


あなた「それが……主犯の子が体育委員で手回ししたみたいで……」


澤村「うわ、ゲス……」





もう正直、諦めるしかない。


重たい空気が流れている中、今まで黙って話を聞いていた清水先輩が私の両手を握った。





あなた「……?」


清水「大丈夫」


菅原「清水、大丈夫ってなにが?」







清水先輩の目は相変わらず綺麗で、透き通っていて、その揺るぎない視線はその台詞が根拠のあるものだと裏付けた。


清水先輩はクルッと振り返り、言った。







清水「まだあと3日ある」

月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°






澤村「つまり……球技大会で優勝しなかったら退部と、月島と縁を切る……ってことね」






部室で着替えてトイレに行こうと歩いていると、いつの間にかいなくなっていた3年生の声が聞こえた。


聞くつもりはなかったけど僕の名前が出ていたようだったから、立ち聞きという形で耳を済ませることにした。



そこには、あなたも居るようだった。











月島「…………」





一通り聞いてから、やっぱり聞くべきではなかったかと後悔した。



あなたは、僕だけには絶対に言わないようにと再三に渡り口止めをしていた。




それが何を意味するのか、最初に聞こえた、僕と縁を切る、という言葉と繋がってはっきりした。





結局、これは僕のせいだ。



最近絡みがなくなったな、いっつも馬鹿みたいに笑い合ってるグループの人と暗い顔で話してばかりいるな、と、気がつくチャンスはあったはずなのに。





僕はいつも彼女に馬鹿と言うけど、今回ばかりは違う。






月島「馬鹿は…………僕だ」






部活が始まって、普通に練習した後に時間のある奴は残れと言われた。



話を盗み聞きしていた僕は、それがあなたの練習なのだと分かっていた。




その上で、山口と一緒に残ることにした。



あくまで知らない振りで。








あなた「えっ、月島くん残ってくれるの?」







先輩達と話していたときの暗い表情は消えていて、代わりにヤル気満々の顔で準備運動をしながら聞いてきた。








月島「キミが僕の足を引っ張らないようにしておかないとと思ってね」








ああもう。


嫌いだ、自分の口。



でも、こんな悪態をつく僕の言葉を、あなたはいつものような笑顔で受け止めた。







あなた「ありがとうっ!じゃあ後でトス上げてよ!月島くんの代わりにバンバン決めるからっ!!」


月島「っ、…………そうじゃなくちゃ困る」







ふいっと踵を返すと、ふふふと笑う声が背中に降りかかった。










球技大会自体は適当にサボろうと思っていたけど、予定変更だ。






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