第379話

どこから突っ込めば、
33,294
2020/06/13 23:42
徹くんのサーブは、澤村先輩によって上げられた。

青城コートに返っていくボールを金田一が叩き落とし、カゲくんが拾う。


そこへ入った西谷先輩がラインギリギリでトスを上げ_____エースが打つ。



ドゴッッ


ボールは綺麗に青城コートに突き刺さり、先制点。



あなた「〜っ!!ナイスキー!!」



決めた本人たちが1番びっくりしてるのを見ながら、手を叩いた。



次はカゲくんのサーブ。


サイドのいいコースに切り入ったボールはスレスレでアウト。



あなた「どんまいどんまいっ!」


悔しそうなカゲくんに声を張ってから、次のサーブは……と視線を動かす。



あなた「……!」



お兄ちゃんだ……。




ピッ




あなた「っ、ナイサ!」



届くか届かないかの声が漏れて、同時にボールが弾き出される。


旭先輩がなんとか上げるけど、少し長い。



「叩け国見っ!」


カゲくんが伸ばした片手はギリギリ指先がボールに届き、上がったトスを田中先輩が打ち込む。



あなた「〜っ!ナイスー!!」


冴子「龍〜っ!よくやったぁぁぁぁ愛してるぜぇぇ!」



姉弟愛がすごいな……。




冴子「もいっちょ決めろぉぉ!」



月島くんのスパイクを松川くんがレシーブ、徹くんが花巻くんに上がる。




ドガッッ



あなた「〜っ!!」



月島くんのブロックがドシャット決まり、軽快な音を立てる。



あなた「月島くんナイスっ!」




かっこいいか……かっこいいよ……。




滝ノ上「うおおお、最初っから互角にやり合ってる!」


嶋田「うん……でもやっぱ一発、日向に速攻決めて欲しいとこだな……」


あなた「ですね……」




カゲくんもちゃんと考えてる。


あの時の、あの一本は私達に大きな影を落とした。


ぶち壊して、前に進むんだ……!





お兄ちゃんのスパイクから、日向が飛び出した。



速攻チャンス……!



ドガッッ



金田一のブロックに弾かれ、ボールが後方へ。




あなた「〜っ、日向、ちゃんと見れてない!」



落ちていくボールを、月島くんが上げた。



あなた「ナイスッッ!!日向ぁ!落ち着いて!!!」




コート内の声かけで私の声は届かない。


なんとか伝えなきゃと息を吸ったと同時に、カゲくんの足が日向のお尻に命中した。




伝え方……!!



結果的に落ち着いたならいいんだけど……。




再度速攻のチャンス。



日向がすぐに助走を取り、飛び出す。





あなた「いけっ!!!日向っ!!!!!」





金田一がブロックに飛び、日向はボールを捌いて切り込む。




ドッッ




あなた「〜っ」



ピッ





「「「「おっしゃぁぁぁぁぁ」」」」







スタートラインだ……!







青城の巧みなコンビネーション、松川くんの日向の誘導、でも前まで烏野じゃない。



自分達の強みを生かして、そして前回の敗北を糧に、じっくりと点をとっていく。


23対22。




滝ノ上「さぁ、また回ってきたぞ……」


谷地「腕もげサーブの人……」


あなた「……やっばいのくる」


冴子「ふぁ?」




徹くんの目……完璧に入ってる目だ。



お兄ちゃんも分かったようで、後頭部を警戒している。




ピッ



あなた「っ、皆気をつけ_____」




ゴゴゴゴォォッ‼︎‼︎



気がついた時には、ボールは床にめり込んでいて。


大きく弾かれて上に跳ね上がった。




ピッ



……アウト。



冴子「すっごい音」


谷地「もう腕吹き飛んじゃう……!」


あなた「…………、」



いつの間にか、呼吸を忘れるほどの破壊力。


このサーブが、あと何回烏野を襲うのだろう。



同時に……一体どれだけの練習をしたら、こんな化け物サーブが出来上がるんだろうと途方もない考えが脳裏を過ぎった。



こちらのセットポイント。


カゲくんのサーブが回ってきて、青城はお兄ちゃんのスパイクで1点差まで追い詰める。




滝ノ上「くぅ〜っ、こういう1本が1番きついんだよな」


嶋田「まぁな、でも青城の方が更にキツ_____」


あなた「ぅぇっ!?」


ピーーーーーッ


滝ノ上「??」


青城、メンバーチェンジ。




英の代わりにコートに入ったのは、賢太郎くんだった。




あなた「よりによってここで…………」


谷地「……?」




お兄ちゃんのサーブを澤村先輩が取って、田中先輩のスパイクはリベロに取られる。



あなた「〜っ、」



やっぱり……!



徹くんが金田一に上げたトスを、文字通り奪うように飛び込んできたのは賢太郎くん。


弾き飛ばされた金田一は尻餅をつき、ボールは勢いよく放たれた。




ドゴゴォォッ!!



ピッ




アウト。




谷地「1セット目先取っ!」


滝ノ上「2セット目も乗ってけぇ!……って、おい?どうした脱力して……」



柵に手をかけて力の入らなくなった足を折り曲げ蹲み込んだ私を、滝ノ上さんが覗き込む。



あなた「や……ちょっと」



今の明らかに金田一のボールだったでしょ……。


あんな乱暴な奪い方して、挙句セットポイントにアウト……!?


賢太郎くん絶対試合出れなくてウズウズしてた系のやつだ……。


手ぇつけられないやつだ。




『心臓に響くバレー』




とは言ったけど……。





あなた「いろんな意味で心臓に悪いからマジでやめて……」






とにもかくにも1セット先取。


続く2セット目を目の前にして、私の心臓はすでにバクバクだった。

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