第76話

‥本音‥
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2020/03/20 07:50
……いや、寝んなよ。




さっきまであたふたしてたくせに、ものの3分ほどで俺に身を預けて寝息を立てている。



まじ、掻き乱される……。



黒尾「おい……寝んなおい。……襲うぞコラ」


体から引き剥がしても穏やかな顔で眠り続ける。


あなた「……むにゃ」


頬を軽く叩くと、虚ろな目で俺を見た。


あ、この目……。


やば、そういえばもう夜___。



あなた「っくろおさんのばかたれぇ!」


バシッ


黒尾「はあぁ!?なんで今そうなる!!」


抱きついてくるかと身構えたのに急なビンタに動揺を隠せない。


あなたは目に涙を浮かべて俺の膝にのぼった。

ポカポカと俺の胸板を叩きながら、涙ながらに言う。


あなた「あたしだってねぇ、すきできたんじゃないしぃ!にしのやせんぱいのためなんだからっ!」


にしのや先輩って誰だ……。


あぁ、好きとか言ってたやつか。


黒尾「あぁ、そうだな。来なきゃ良かったな」


殴り続ける小さな拳をキュッと握ってなだめる。

これが本音か……。


俺たちに会えて良かったなんて、思ってるはずがない。

こいつにメリットなんてなかったじゃないか。



折角来たのに呼んでないなんて言われて

タオルとか戦略とか飯とかめっちゃ頑張ってんのに認められなくて

好きなやつと離れてこんな知らない男ばかりのところで必死に頑張って


こいつに良いことなんてなかった。


さっきの、「出会えて良かった」っていうのは、社交辞令的なあれだったんだな。




そんな俺の思考を呼んだかのように、あなたは溜めた涙を流した。


あなた「きたくなかったなんて……おもうか、あほが!」


黒尾「……え?」


あなた「あた、し…………ねこまのばれー、すきだ、よ。くやし、いけど、みんなのばれー、みてて、おちつくもん……くろおさんだって、あいてみて、ちょうはつうまくて、ちーむにたりないこうげきめんとか、おぎなってるし、ちゃんと、きゃぷてん、してる……けんじつなぷれーしてるけど、ぎじゅつがたくさんあって……だから、みんな、くろおさんをしんらいして_____」







なんなんだよ、こいつ。



こんな短期間で、俺のこと、嫌いなはずの俺のことを、こんなにも理解して……。


それを本心で、伝えてきた。





しかも言いたい放題言って二度寝するし。




俺の胸元に寄りかかってスースー言ってるあなたを、また抱き締めた。











黒尾「_____認めるよ」

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