第288話

‥持ってるもん‥
39,460
2020/05/01 22:43
武田「明日の予選で2回勝てば、10月の代表決定戦に進出できます。この1次予選を突破した8校に、さらに強豪8校を加えて____」




いよいよ明日……本番だ!



谷地「ぃょ、いよいよ公式戦すか……緊張、緊張してきた」


清水「仁花ちゃんには初めての公式戦だもんね」


谷地「ぁぁす……」


あなた「頑張ろうね!」


谷地「うん……!」


清水「……私達には、最後だ___」



“最後”



3年生にとって、これが最後の大会。



絶対、絶対優勝して……それで、全国に行くんだ!




「ナイス~」


キュッ……キュッ…………


「こいやぁ!」



やっぱり私、ここが好きだ。
















「お疲れ様でしたぁぁぁ!」




日向「なぁあなた!あなた!!」


あなた「ん、なぁに?」



ドリンクを運んでいると、サッと手伝ってくれながら日向が楽しそうに離した。



日向「これから影山と、烏養監督のとこ行って練習すんだけど……一緒に行こうぜ!!」


!……烏養監督。


あなた「ん!行く!!」






即答して行くことになり、先に着替えた私は校門で2人を待った。



山口「あ、あなたちゃんお疲れ~」


月島「……」


あなた「お、2人ともお疲れ!」




月島くんの不機嫌そうな顔はいつも通りだな、なんて思いながら、手を振った。



山口「そういえば、いつこっち戻って来たの?」


あなた「一昨日の夜だよ~」


山口「えぇ、大変だね。い、言ってくれたら駅まで迎えに行ったのに……」


あなた「あー、あは。実は西谷先輩が迎えに来てくれてて……」




あ、まずった。


こんなこと言ったら、勘違いされるよね……?



あなた「あ、その……たまたま近くに来てたみたいで___」



月島「山口」



言い訳をしようとした私の言葉を遮った。



月島「そういえば、田中さんが後で来いって言ってたけど」


山口「え!それほんと……!?行ってくる!」




「待ってて、待っててよ!?」そう言って、全速力で走り出した山口くんの背中を見送った。




月島「で?」


あなた「……?」



同じように山口くんを見送った月島くんが、こっちに向き直した。



「で」とは??



月島「それ……西谷さん?」



指差してきて、その方向を辿るとどうやら私の首元を指しているよう。



……あ。




まずい。




そう思って後ずさった時にはもう遅かった。



月島くんは私の手ごと鞄を掴むと、グイッと引き寄せる。




月島「……西谷さんに付けられたの?」



あなた「っ//まさか!!そんな訳……」



そう、そんな訳ない。


そんな都合いいことがある訳……。



月島「誰」


あなた「……月島くんには、関係ない」



目をそらしながら、黒尾さんのことを思い出した。


あの人も気づくの早かったもんなぁ。



月島「……言わないなら、痕増やすよ?」



顎ごと下から掴まれて、顔を持ち上げられた。



あなた「ぅ…………お世話になった人の……お家の人」



堪忍して答えると、あからさまに顔を歪めた。




月島「キミ本当に……なんでそんなホイホイ男引っ掛けるわけ」



あなた「言い方……」



つくづく黒尾さんだなぁ。



月島「無防備過ぎるんじゃない?もうちょっと警戒心持って接することが出来ない訳?」



それこそ、月島くんには関係ないのに……。



あなた「…………持ってるもん」



小さく呟くと、「へぇ?」と声を荒立たせて手に力を込めた。




西谷𝓈𝒾𝒹𝑒.°




全く……龍の奴。


山口に伝えることがあるの忘れてたって……先に帰っちまうぞ?



……ん?あそこにいるのは……。




月島……と、あなた……?



なにやってんだ?




「~っ、~……!」




なんか言い合いしてる?



「……へぇ」




!!?



月島が、あなたの顔を引き寄せて。




ここからはよく見えないけど、あれは……。




そうだ。




唇を、重ねていた。

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