第435話

いつものように
31,138
2020/08/19 12:23
影山𝓈𝒾𝒹𝑒.°








本当は、多分ずっと。



俺はこいつに甘えたかった。





中学の頃、立て続けに起こった色々な事で見えない暗闇に落とされかけた時。



本当はこうしたかった。




中学で初めて知り合ったって思えないくらいの信頼感と、一緒にいる時の安心感が俺にそうさせたがった。




でも知っていたから。




国見と毎日楽しそうに学校に行って、時間を過ごしている2人を見ていたから、そんなことできなかったんだ。




別れたって聞いて、それが俺のせいでもあると分かった時、申し訳ない気持ちより安堵が勝ってしまったあの時の自身を、俺は今でも許していない。




でも、だから……。




また誰かのものになって、あんな思いをしたくないと思った。




そう、もし叶うなら_______。





あなたの隣に、ずっと居たい。




それがもし、"彼氏"って立場でしか成り得ないなら……。




力尽くにでも、俺のものに………………、






あなた「…………カゲ、くん」



影山「……!」






身を任せていた俺は、震えた声に顔を上げた。



目の前には、目を潤ませて、それでも頬をほんのり赤く染めているあなた。






あなた「……ね、ちょっと」





目をそらして俺の胸板に手を当てると、グイッと押し返されて起き上がった。




……なんだよ。




いつもみたいに、「私はカゲくんの側にいるよ」って…………言ってくれるんだろ……?






あなたは、唇をキュッと結んで俺から一歩離れてから。







あなた「…………私は、カゲくんのでも、誰のものでもないよ」






視線は落としたまま、あいも変わらず同じ表情で溢した。







影山「……わりぃ……嫌いになった、か?」







いつもと全然違うその態度に不安になって尋ねると、ブンブン首を横に振った。








あなた「そんな訳ない…………。でも、今までみたいに軽々しく、"側にいる"って……言えない。……ごめん」








……なんで、俺の顔見ねぇんだよ。






なんでそんな、顔赤くして、苦しそうな顔して。







今にも泣きそうに、なってんだよ……。








あなた「…………部活、先行くね」






影山「!」









逃げるように踵を返して教室から出ていった背中をただ見送って、俺はその場に蹲み込んだ。





あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°





教室を出てカゲくんが追ってきていない事を確認してから、壁に背を預けてガクりと座り込んだ。







あなた「いや……相手、あのカゲくんだよ……?そんな、訳……//








私は、きっと初めて、カゲくんを本当の意味で"男の子"として認識した。





それが、月島くんの事、西谷先輩の事、色んな事が合わさって鎖となり、私の胸を締め付ける。







あなた「_______お腹痛い……













あなた「こんにちはー……」



烏養「おし、休憩!!……お、影山どうなったんだ?」




体育館に入ると丁度休憩時間になった所で、コーチが近寄ってきた。




あなた「あ……もう少ししたら来ると思います」


日向「あなた〜っ!見て!俺ちょっとだけサーブ上手くなった!!」


澤村「休憩は休憩しろ日向っ。すまんなあなた、影山のお守り大変だろ……」



ボールを片手に飛んで来た日向の首根っこを掴んで止めた澤村先輩が苦笑し、私も同じように笑った。




仁花「あなたちゃん、これ、今年春高に進んだチームの一覧らしいよ!」




「私は見てもよく分かんないけど……」とはにかみながら渡してくれて、目を通す。

  

研磨くんや黒尾さんから聞いていたので音駒と梟谷については知っていた。




ただ、私が気になるのは_______、。







あなた「………………」



田中「どうした、関西方面ばっかりじっと見て……」



あなた「_______あった」





勿論、が予選落ちするとも思ってなかったけど。



なんとなくお互い、別れ際に春高の話をした分聞き辛くて連絡をとっていなかった。







兵庫県の代表欄にしっかりと〔稲荷崎高校〕の名前を確認して、思わず気持ちが昂った。



 

ちゃんと……私達も春高、行くよ。




 
仁花「あなたちゃんが、紙を見つめたまま動かない……」


清水「どうかしたの?」


あなた「………………へ?」




呼ばれていた事に気が付かなくてようやく顔を上げると、その後ろにいる西谷先輩と目があった。





西谷「……」


あなた「…………、」





やっぱりまだ、普通に話す事はできなさそうで。



顔をそらしてしまった罪悪感に包まれながら、練習は再開された。








澤村「ナイッサー!」


田中「レフト〜!!」


日向「ワンタッチ!!」


烏養「常に次のプレーを意識して繋げろ!」


「「「あぁっす!!」」」




キュッ、キュッ とシューズに擦れる床の音。



皆の声かけと、繋がれていくバレーボールの心地よい旋律。




ただ、いつもの練習風景のはずなのに、何故か今日は視界がぼやけて見える。





……カゲくんがいないから?



さっきの事、深く考え過ぎてるのかな?






ボーッとして、普段通り分析を楽しむ事ができない。




切り替えないと……。




あなた「私、ドリンクついでくるねっ」


仁花「えっ、私行くよっ。あなたちゃんには見ていてもらわないと……」


あなた「ううん、ちょっと気分転換に外の空気吸って来たいからっ。任せて!」




ボトルを持ち上げて抱えると、「分かった!」と両拳を握った。






ガララ……、






あー……なんか変な感じ。






そういえばずっと顔が熱い。









頭もボーっとするし視界はぼやけるし……ほんと気持ちに左右され過ぎ_______、















あれ……?









落としそうになったボトルを抱え直した瞬間、世界がグラりと揺れて、そこでやっと、気が付いた。






あ……これ、気持ち的な問題じゃなくて……。








ドサッ……、
















ただの熱だ……。








仁花𝓈𝒾𝒹𝑒.°





清水「……今、何か聞こえなかった?」


仁花「え?」





清水先輩が扉の向こうをじぃっと見る。




確かに、言われてみれば……雨の音と混じって何か鈍い音がしたような_______、





武田「何か風で飛ばされてきたんでしょうか……見てきますね」





武田先生はガラッと扉を開けて外に身を乗り出すと、「岩泉さん!!!?」と声を張った。





あなたちゃん……!?




清水先輩と顔を見合わせて、すぐにそちらに駆け寄った。




選手の皆も扉の方へ走って、私達の目は散乱しているボトルとその中心で倒れ込んでいるあなたちゃんを捉えて。





武田「岩泉さん、聞こえますか!?」





タタッ、





駆け寄った武田先生の所に1番に走っていった"その人"は、倒れたあなたちゃんを軽々とお姫様抱っこした。







「運びます」







ただそれだけ言って、校舎の方へと歩いていく"その人"を、「練習再開していてください!」と手を上げた武田先生が追いかけていった。






✂︎_________________________




8月19日!


ハイキューの日ですね(*´ω`*)



今日は何があっても更新しようと思ってたのでできてよかったです←っていう私事でした!



完結はしましたが、私にとって8月19日は誕生日と同じくらいこれからもずっと大切な日であり続けます!





それから、いつの間にか……。





ななななんとっ!!






デイリーランキング最高1位になれてました!!




これもあれもどれもそれも皆さんのおかげです。




本当にいつもありがとう←何回言ってんだか



皆大好きです!





これからも、この小説と双葉🌱🖇を
よろしくお願いします💪❤︎






双葉🌱🖇.

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