月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°
ボトッ
あなた「あっ、ダメだ月島くん!」
月島「……なにが?」
下駄箱で上靴を履き替えながら、あなたはハッとしたように目を見開いて上履きを落とした。
拾い上げながら尋ねると、まるで世界の終わりとでも言うように顔を青ざめる。
あなた「週末、雨だよっ!」
……週の始めにそんなことまで把握してるの?
月島「……じゃ、出掛けるのは今度にする?」
あなた「う……ん、」
……。
なんだよそのしょんぼり顔は……////
付き合うことになってから可愛く見えるのは気のせい?錯覚?
月島「家は?……別に僕はどっちでもいいけど」
抱き締めてやりたい衝動を抑えながら平成を装うと、あなたは「あ"ー」と言葉を濁した。
あなた「うち……厳しいかも。昼間なら多分平気だけど、部活終わった後だしそんなに長く居れない……」
月島「?」
夕方以降だとダメな理由でも?
あなた「……お、お兄ちゃんが……居る、から」
言いにくそうに俯いて、くつ箱を静かに閉める。
“お兄ちゃん”……?
あぁ、4番か。
あなた「うぅ……お兄ちゃんにバレたら確実にやばい……しかも最近徹くん頻度が凄いし……」
……及川徹か。
絶対に会いたくないな。
あなた「週末はお預けかぁ……」
肩を落として石段を降りるあなたの背中に、聞こえるか聞こえないくらいかの声で投げ掛けた。
月島「……僕の家でもいいけど」
あなた「!」
めざとく振り向いて、目をぱちくり開ける。
あなた「……いいの?」
月島「別に……家族居るかもしれないけど」
あなた「…………」
少し黙り込んで、視線を落とした。
……流石に、付き合いたてで家に招くのは難あるか?
月島「嫌なら別にいいけどね」
本当は来てほしいけど、僕にそんなことも言えるはずがなく。
追い抜かして進んでいると、少ししてトトトッと追い付いてきた。
あなた「い……っ、いく!」
袖をキュっと掴んだ上目使い。
月島「……//あ、そ」
一気に胸が締め付けられて、熱くなった顔を見られないように背けた。
……部屋、掃除しよう。
あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
一瞬迷ったけど……。
侑とか……治とか、倫くんとか。
それから、松川くんとも色々あったしなぁ。
でも、だって……月島くんは私の“彼氏”だから。
お家に行かない理由なんてない……よね?
更衣室前で別れてから、着替えて体育館に向かった。
やっぱり足取りは軽くて、月島くんの存在の有り難さが身に染みた。
あなた「……おっ、カゲくん早いねぇ」
影山「おう。ネット頼む」
あなた「はいは~い」
救急箱を壁側に寄せて置いてから、2人でネットを張った。
影山「……打つか?」
あなた「、打たない打たないっ。私マネージャーだしっ」
ボールを片手に尋ねてきたので、そう答えてドリンクの準備に取りかかった。
この間打たせてもらったときピンチになったし……。
谷地「あなたちゃん~」
あなた「仁花ちゃんっ。お疲れ様~」
日向と小走りで寄ってきた仁花ちゃんと、作業を進める。
谷地「そう言えば、昨日って体育の日だったんだよね、」
あなた「あ、そうだね。祝日」
仁花ちゃんは腕をまくりながら呟く。
谷地「体育の日って……10月10日のイメージだったって日向がさっき言ってて」
あなた「あ~。ちょっと前にハッピーマンデー制度みたいなのが導入されたらしいよ。なんか、月曜を休みにしたら連休がとりやすくなるって」
谷地「へぇ……!あなたちゃんすごいねっ。日向は、そしたら明日が休みだから、連休よりお得感あるよねって言ってた」
あなた「あはは……まぁ学生からしたらねぇ。どうせ部活はあるけ…………ど」
……明日?
今日って、10月9日。
明日は、10月10日。
…………10月10日って、
西谷先輩の誕生日……だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。