第402話

こだわり
28,923
2020/07/19 08:32
運命のファイナルセット。



皆のスタミナが心配だ……。



スターティングは菅原先輩でいくようだ。




工くんのサーブで、ファイナルセットは幕を開けた。



旭先輩のスパイクで1点先取。



若くんのスパイクが続き、点を取り合う。




西谷先輩のトスからのシンクロ攻撃が、菅原先輩のスパイクで綺麗に決まりブレイク。



白鳥沢はすぐにタイムアウトをとった。




良い流れ……こっからペース上げていけば。




って、思ってたけど……。




ドゴォッ!!




……若くん止まらない。




あれ、絶対ゾーン入ってる。




とうとう逆転されてしまった。




若くんのバックアタックを、月島くんがワンチ。



ぎりぎりカバーが遅れて、向こうの点になってしまった。





続けて天童さんのスパイクにも反応し、ブロックで弾く。




「もっかいもっかい!!」




大平さんに上がったトスを追いかけ、またもやワンチ。




あなた「〜っ、ナイスワンチ!!!」


滝ノ上「やべぇ、ツッキー超心強い……!//」




照れたいのは私だよ!!




西谷「チャンスボール!!」




田中先輩のスパイクはリベロに取られて、天童さんが助走に入る。



天童「もう……いっ、ちょ〜!!」





集中……してる。


指先まで神経を集中させて、トスを"見て"いる。




白布さんがトスを上げた先には、若くん。


田中先輩と2人のブロックを前に火力満タンのスパイクを放ち、月島くんの手を弾いてコートに突き刺さった。




あなた「_________、」




ブラックアウトという判定になり、向こうに点が入った。





あなた「…………月島、くん?」



谷地「……え?」




今……スパイクが当たった時確かに……変な風に。




すぐに異変に気が付き、コーチ達がコートに入る。




烏養「とりあえず医務室だ!」


あなた「っ、」




谷地𝓈𝒾𝒹𝑒.°



月島くん痛そう……!


行かないと、と足を動かしたと同時に、隣にいたあなたちゃんがいつの間にかいなくなってる事が分かった。



見上げると、既に出口を通っていて。






……あんなに素早く……やっぱりちゃんと見てるからだ、凄い。




月島くんのお兄さんがそれを追いかけていって、とりあえず私は残ることにした。





あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



気が付いたら足が動いていた。


必死に走って、会場の出口で出てくるのを待つ。




明光「あなたちゃんっ」



後ろから、同じく走ってきた明光さんが追いついてきた。


同時に月島くんが出てくる。




明光「蛍!」


月島「兄ちゃん……なんで居るんだよ。知ってたけど」


明光「弟の勇姿を見にきたに決まってんだろ?……その様子だと、死にはしないな」


月島「「死」ってなに……生きてても肝心なところで、役立たずだけどね。まぁでも、5セットなんて疲れるし、休めて丁度いいよ。手痛いけど」




声が、震えている。



本当は、そんな事思ってないのに……。



それは、明光さんもよく分かっていて。




明光「"俺の仲間は放っといても勝つ!"……そんくらい、信じとけばいいんだ」




悔しそうなその背中に、その言葉を投げかけた。





凄いな、お兄ちゃんって……。







どうしても、私が声をかけると"彼女"としてになってしまいそうで……。


何も言えなかった。




だけど、




明光「行ってやってよ」



あなた「……え?」



明光「兄弟だから分かる。蛍には、あなたちゃんが必要だから」




……、。



大きく頷いて、月島くんを追いかけた。


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