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第1話

黒猫、宣戦布告
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2023/05/10 07:48
黒尾𝓈𝒾𝒹𝑒.°



いつもいつも……。


俺が何かしようとすると、どうも上手くいかない。



泣かせてしまう。




本当はそんな事、したい訳じゃねぇのに。





なぁ、あなた……。





好きだ。








お前が思ってるよりずっと、ずっと……。





だからこそ、本当に好きなやつと・・・・・・・・・付き合って、幸せになってほしいんだ。





綺麗事?偽善??





何て言われても構わない。







でも、心から大切な人が泣くほど辛い恋をしてるって気付いた時から……。








俺はお前に、笑っていてほしいだけなんだ。



それが西谷の___俺じゃない誰かの隣なら。









喜んで汚れ役を引き受けよう。










なぁ、あなた……。







俺のひねくれた性格を、含めて全部出会えてよかったって言ってくれたあの日から……。





俺の心ん中全部お前のものなんだよ。








散々傷つけた。泣かせた。







なのにずっと、笑顔を向けてくれた。






ヒマワリみてぇな・・・・・・・・お前の笑顔に、何回救われたと思う?






幸せになってくれ。







いや、でも……ここで本音を言えるなら。












願わくば……“俺が”、幸せにしてぇんだ。




あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°




黒尾「お前が……もう、」



ますます震えた声が、耳から直に脳を揺さぶる。



黒尾「俺に振り向く事って、ねぇの……?」


あなた「____っ、」




“ない”なんて……言いきれる訳がない。


だって今、この瞬間も……揺らいで揺らいで、仕方ないんだから。


でも、こんなこと……。





黒尾「俺の事傷つけるとか、この先の俺の事考えて、とか……そういうのは抜きだからな」




口を開けた私はその言葉に、もう一度つぐんだ。


黒尾さんには、お見通しだ……。




あなた「でも……」




言葉を濁した私を抱き締める腕を、そっと緩めて。


スッと離れてから、やっぱり赤い目元を優しく綻ばせた。





黒尾「なぁ、俺ら……“そういう相手”だろ?」


あなた「……!」



最初っから、馬が合わなかった。



ううん。だって、清水先輩目当てだったもんね。



だけど、認めさせてやりたくて。



必死に頑張って、その内に話しててすごく楽しくて。



バレー以外の、別の場所で会ってたら……きっと、良い友達になれたんだろうなって。



“そういう相手”



思ったこと、包み隠さずに言える相手……。



思えば1番、心を許してた部分もあったかもしれない。



黒尾さんになら、多少塩対応でも楽しいかな、とか。



毎回の合宿で毒舌に言い合うの、ちょっぴり楽しみだったりして。




あなた「…………分かん、ない」




だから私は、今の気持ちをそのまま言葉にした。




黒尾「それは…………この先、俺にもチャンスあるってことだな」



あなた「~っ……わ、かん……ない」




人の気持ちがどうなるかなんて、分からない。



ううん、自分の気持ちでさえ分かんないの。



だって、そうでしょ……?






あの日、3年前。




あの試合で出会った西谷先輩に、こんなにも溺れていくなんて思ってもなかったんだもん。








黒尾「……絶対だ」







止めどなく流れ続ける私の涙を長い指ですくって。






黒尾「何ヵ月……何年、何十年かかってでも……」






そしていつもの、いたずらっ子の笑顔で。






黒尾「絶対、お前の“1番”に、なってやるからな」



あなた「~っ、/」





ニシシと歯を出して、無造作に私の頭を撫でた。






黒尾「覚悟しとけっ」










黒尾さん……卑怯で、ごめんなさい。








突き放せなくて、ごめんなさい。







黒尾さんはやっぱり、私の葛藤を読み取って……。








黒尾「ふっ、めっちゃ不細工~っ」





そう言って顔をしわくちゃにして笑うので、





あなた「るっさいわ馬鹿野郎!」





私も笑って、その鶏冠トサカを叩いた。

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