あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「______ん……、」
目が覚めて、自分がいつの間に眠ってしまっていたのかと不思議に思った。
確かお風呂から出て……えっと、
近くにあったスマホの画面をつけてみると、まだ6時前。
とりあえず二度寝しようかと落ちていく瞼をなんとかこじ開けて、体を起こした。
ん……?そういえば私、松川くんのお部屋に来たんだよね。
で、ベッドは1つしかなくて……って、松川くんは、?
両隣を見てみても、ソファーを見ても姿がない。
昨夜の幽霊話を思い出して不安になり、ベッドから急いで降りた。
ムギュッ、
?「んぐ……ッ、」
あなた「ひぁ……、!?」
明らかに床とは違う感触に驚きベッドに尻餅を付いた。
恐る恐る見てみると、何故か床で眠っている松川くん。
あなた「って、なんで床________、?」
松川「ん……ぅ、?…………踏まれた、」
あなた「ご、ごめ……!まさか床で寝てると思わなくて!!」
松川「…………誰のせいだと思ってる?」
あなた「え?」
その口ぶりは……私のせい、?
私がベッドを占領してしまっていたから?
だとしたらまだソファーで寝た方が体も痛くないだろうに……、
松川「すっごい忍耐力のいる夜だった。………おはよ。」
あなた「お、おはよう……、?」
あまり眠れなかったようだから、もう少しベッドを使って寝ないかと提案したけど却下されてしまった。
"その布団で正気で寝れるはずもない"って、どういう意味かよく分からないけど……。
松川「ちょっと早いけど、駅に荷物置いて移動する?どこかで朝食べればいいし。」
あなた「そ、そだね……!準備してくる!」
スマホを持って部屋を出て、自室に移動した。
ベッドメイクされたままの綺麗な布団にボスッと身を預け、目を閉じる。
一晩……同じベッドじゃないとしても一緒に過ごしてしまった。
お兄ちゃんたちには内緒かな……?
と、そういえば。
通知をオフにしていたLINEを開くと、案の定お兄ちゃん達からの数件の新着メッセージ。
よし、準備するか。
とりあえず顔を洗って、服を着替える。
髪は……何もしなくていいか。
荷物をまとめてキャリーに詰め込み、軽くメイクをして準備完了。
このキャリーバッグともお別れか……。
中学の修学旅行で使ったキャリーバッグでは、イタリアに行くのには物足りない。
大分大きな物を購入したけれど、それでも結構な断捨離をしないといけない。
1つ1つ、ものを捨てていく度に。
日本に残す未練を消していっているようで……少しだけ、悲しい。
チェックアウトを済ませ、ホテルを出た。
3月といえど、東北はまだまだ寒い。
風に吹かれてキュッと胸元を閉めてから、駅へと向かう。
あなた「着付け、何時だっけ。」
松川「11時だね。とりあえずどっかで飯にする?」
呼応するように鳴った私のお腹。
恥ずかしくてサッと腹部を隠すと、「丸聞こえ。」と微笑されてしまった。
寝ただけなのにお腹空くのなんなの……。
松川「及川たちからLINEきてたんじゃない?」
あなた「来てたよっ。お兄ちゃんから電話あったみたいで……。さっき返信した!」
松川「花巻と及川は?」
あなた「花巻くんからはなんか"無事か?"って来てたから、無事だよ。って返したよ〜。」
松川「……あぁ、及川は未読ってこと?」
あなた「ううん?既読無視っ。」
松川「…………不憫。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。