※甘々要素ありますご注意を※
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国見「___見つけた」
あなた「っっ、」
もう帰ろう、思い出に浸っていたからこんなことになったんだ。
もう一度逃げ出そうとしたとき、英はしっかりと私の腕を掴んだ。
国見「俺は、ジンクスは信じない」
あなた「…………え?」
国見「だけど、ほんの少しでも好きな人と一緒にいれる時間が増えるなら、それもいいかなって思ったんだ」
グイッ
あなた「ちょ…………英、離してよっ」
国見「…………」
英は足取り迷わず、私の腕を引っ張って観覧車へと向かった。
もう日は完全に沈んで、親子連れは帰路につく時間。
並んでいるのは、カップルばかり。
あなた「ねぇ英、いやだってば」
本気の抵抗は、中学までは頑張れば抜け出せたはずなのに無駄になった。
店員さんに半ば無理矢理押し込まれて、扉がしまる。
……くそぅ。
あの営業スマイルが初めて腹立たしいと思った……。
国見「……座りなよ」
促されて、流石に一周立っているのはしんどいので英の向かいに腰を下ろした。
窓からは、夜景が見えて、だけど今の私にはそれどころではなかった。
国見「……さっきから口隠してるけどどうしたの?」
月島くんを彷彿とさせる悪い微笑で尋ねてきた英は、やっぱり少し不機嫌みたいだった。
あなた「……なんでもないよ」
このまま、何事もなく一周が過ぎてほしい……そんな淡い期待は、すぐに砕け散った。
英が腰を浮かせる。
国見「……口隠しても、っ、こうして手掴んじゃえば関係ないね」
あなた「っ、英…………お願い、やめて……」
こんな……。
こんな風に約束を果たされてもこれっぽっちも嬉しくない。
国見「__ほら、もうすぐ頂上だよ。夜景が見える……」
言いながら、私が座る座席に膝を乗せた。
あなた「……やめて」
国見「…………口開けろ」
あなた「っ、」
フルフル首を振って抵抗するけど、英の顔はどんどん近づいてくる。
頂上の少し手前で、降ってきた英の唇を避けられなかった。
あなた「っっ、~……、」
軽く触れた唇はすぐに離れて、スイッチが入ってしまった英はまたあの顔を私に向けた。
国見「……口閉じるな」
キュッと口を閉じて、首を思いきり振った。
お願い英……やめてよ。
もう、頂上がくる。
あなた「~っ、ふ……ぅ」
英の冷たい手が、耳をなぞった。
初めてこのキスをした時、恥ずかしがって口を開けられなかった私に英は同じことをした。
あの時はすぐに開いちゃったけど……。
でも違う。
私は、好きな人がいるんだ……だから、だから頂上の間だけでも……耐えるんだ。
国見𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「~っ、ふ……ぅ」
ほら、口開けろよ。
あの時みたいに、従順に…………。
それでも、目に涙を浮かべながらあなたは唇をキュッと閉めたままだった。
頂上が、過ぎた。
恐る恐る目を開けたあなたは、俺を涙で溜めた瞳で見る。
……分かったよ。
もう、俺の負けだ。
国見「…………ごめん」
あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
…………耐えた。
よかった……。
謝る英をとりあえず向かい側に座らせてから、呼吸を整えた。
あなた「ごめん英……私、好きな人がいる。だから、英とやり直すことはできない」
国見「___分かった」
思いの外すんなり承諾してくれて、ホッとした。
国見「じゃあ…………友達から、やり直してほしい」
あなた「……え?」
友達……友達かぁ。
うーん……。
英を見ると、ついこないだ見た堅治くんと同じすがるような悲しい目で、私は心底自分の性格が嫌になった。
あなた「……うん。友達から、やり直そっか」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。