西谷「それと……」
あなた「?」
西谷先輩は首の後ろをポリポリと掻いて、気まずそうに言った。
西谷「負けたら、今朝のあいつとデートする、って、マジ……?」
あ。
ヤバイすっかり忘れてた……。
あなた「って、しませんよ!?デートなんて!絶対!!てか烏野負けませんしそれにっ__」
ついつい熱くなって饒舌になる私をみて、先輩は少し笑った。
西谷「……そっか!なんか俺、その話聞いてからここんとこがずっとモヤモヤしててさぁ」
胸に手を押し当てて、元気に笑った。
西谷「なんでか分からんけど今のこと聞いたらスッキリしたわ!サンキュー!」
胸が、モヤモヤ??
それってまさか……。
西谷「?あなたどうした」
あなた「っ、いえ!なんでも……」
西谷「大丈夫、負けねぇから。そのリストバンド着けて、俺を信じとけよっ!」
そう言って、グッと握った拳をつきだした。
あなた「っ、はい!」
何だか今日は、やっぱりいい日みたいだ。
日向を探しに戻っていった西谷先輩の背中を見送ってから、ジュースを買う前にお手洗いに行こうと反対方向へ歩きだした。
ドンッ
あなた「へぶぅっ」
角を曲がったところで誰かにぶつかった。
あなた「っ、すみません!」
慌てて頭を下げる。
?「いえ、こちらこそ……って、二口の彼女!!?」
……え?
よく見ると、今朝の伊達工の人だった。
あなた「……えと」
?「あぁごめん。俺は主将の茂庭要です」
丁寧に挨拶をしてくれた。
あなた「あ、ども……。岩泉あなたです__って、私は彼女じゃなくて」
訂正しようとしたところへ、頭をガシッと捕まれた。
二口「先輩ぃ、何人の彼女に絡んでんすかぁ」
あなた「だから彼女じゃないでしょうが!」
?「おーい茂庭……あ!二口の彼女!?」
だーかーらー……。
後ろで大笑いする堅治のお腹に肘打ちを食らわしてから、懇切丁寧に訂正した。
鎌先「なんだやっぱりそうか!!二口に彼女なんてあるわけねぇよなぁ!」
がはははっと笑う鎌先さんとは、なんだか馬が合いそうだ……。
二口「筋肉のことしか考えてない鎌先さんには言われたくねぇす」
鎌先「あんだとおぉ!?」
二口「それと、あなたさぁ」
振り返って、挑発的な顔で私と目線を合わせた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!