軽快なリズムの音楽とともに、侑がボールを片手に持ってエンドラインに向かう。
対稲荷崎。
初っ端のサーブは、宮侑。
ピーーーッ
試合開始のホイッスル。
数秒して、侑の掲げたその手はギュッとグーを形作った。
同時に、その応援団からの音楽が鳴り止む。
何度見ても綺麗な統制。
そして、この緊張感が_______コートを飲み込む。
キュッ キュ、
綺麗に、高くサーブトス。
「「そぉぉぉぉぉぉぉぉぉれっ♡」」
あなた「____ぁちゃ……、」
谷地「…………、?」
侑が打ち込むのと合わせて、あちらの観客席にいる女の子2人組が声を発した。
ドォッ‼︎
エンドライン際に、真っ直ぐ吸い込まれたサーブ。
田中先輩と西谷先輩の真ん中に劈いた。
「「「!ナーイッサーあーつーむー ナイッサーあつむ いいぞいいぞあつむ もう一本ーー!!」」」
一泊置いてから、ワッと盛り上がる観客席。
谷地「あなたちゃん……さっき、どうしたの?」
あなた「え?……あぁ、ほら。」
スッと指さした先、侑に視線を向けた仁花ちゃんが、「ひゃ、」と一歩後ずさった。
とんでもなく機嫌が悪い。
あなた「さっき、侑のサーブの時……ピタって応援が止んだでしょ?あれがルーティンなんだけど、あそこの女の子2人組、それ知らなかったみたいだね。」
案の定、侑から酷い眼力を飛ばされて半泣き状態。
応援団の1人が事情を説明しに行ったようでムスッとした顔でその場に座った。
あなた「まぁそれはともあれ……身構えすぎだね。一本取られちゃった。」
谷地「すごい威力……腕もげそう、、。」
あなた「大丈夫。ちゃんと特訓の成果は出るはずだから____。」
谷地「"特訓"……?」
徹くんと、若くんと。
あんなにひたすら練習に付き合ってくれたんだもん。
西谷さんと澤村先輩は、必ず_______。
ピーッ
2度目の侑のサーブ。
キュ、キュッ..
ドンッ!!!!
澤村西谷「アウト!!」
侑「アカーーーン!!」
ボールはアウト。
しっかり見極めた2人に賞賛の拍手を送りながら、治に煽られている侑をチラッと見た。
谷地「ホッとした……。」
あなた「侑だって誰だって、完璧じゃないからね。今はサーブトスがちょっと流れてた……エンジンかかるまでにアレに慣れないと。」
烏野サーブは、東峰先輩。
エンドラインに立つ。
菅原「旭、一本集ち____」
「「「ブゥーーーーーーー」」」
あなた「!」
稲荷崎高校からの、集中したブーイング。
谷地「な、なにこれ……ひどい、」
あなた「自チームのサーバーには静寂と集中を…で相手には喧噪と動揺を______稲荷崎の応援スタイルだよ。こういうのに左右される人としない人がいるけど……東峰先輩は、」
ドチィッ
ピッ
予想通り、白帯にかかってボールは烏野コートに落ちた。
「「「ラァーーッキー!稲高ーー!」」」
あなた「好きになれないね。こーゆーとこは。」
谷地「確かに、気分は良くないよね……。」
あなた「北さん_____向こう側の主将は、こういうの好かないタイプだとは思うんだけど。」
応援団が勝手に……か、もしくはこれが伝統なのか。
どちらにせよ、見ていて気分が悪い。
何はともあれ、試合は始まった。
大丈夫。
きっと、皆なら__________
〈正に東西セッター対決____
ドッ!!!
あなた「_____________、!?」
〈えーーっ……と、そ……速攻のタイミングが合わなかった様です日向翔陽。烏野高校は立ち上がりまだバタついています……かね?〉
前途多難。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。