扉からひょこっと顔を覗かせたのは、今日も元気にオレンジの髪を跳ねさせている日向だった。
あなた「どーした~?」
卵焼きを口に含んでから近寄ると、両手を合わせて頭を下げた。
日向「改めて……昨日はごめんっ!!」
あなた「っ、ううん……私も、急に殴っちゃってごめんね」
廊下で話さない?と言われて、2人で窓にもたれた。
あなた「あのさ日向」
日向「うん?」
あなた「ありがとう」
日向「へっ?」
間の抜けた反応に笑うと、「なんでなんでっ?」と食いつくのでまた笑った。
あなた「不謹慎……かもしれないんだけどさ、私昨日、ちょっと嬉しかったんだ」
日向「……嬉しい?」
あなた「うん……カゲくんと、バレーのことでちゃんと正面からぶつかり合ってくれる日向の存在が、本当に尊いものだって思って」
日向「俺はっ…………俺は、自分のことばっかで」
しょぼん、と音がしそうなほど顔を俯かせる。
バンッ
日向「うぐっ」
背中を思いっきり叩くと、前によろけた。
あなた「ほらほらもう!下向かないっ!今だからできることもあるんだよ!」
日向「……あなたって案外暴力的だよな」
あなた「っ、うるさーい!」
追いかけ回すとはははっと元気に笑って逃げ回る。
あなた「よしっ、いつもの日向だっ!!」
日向「えっ?」
あなた「私、日向の笑顔大好きだよっ!」
日向「っ、//」
菅原先輩にされたように頭を撫でると、驚いたように顔を赤くして、そして歯を出して笑った。
日向「サンキューな!!」
烏養「いらっしゃ…………あなた」
あなた「ちわ~」
放課後、することもないしカゲくんは見つからないし、とりあえず涼もうと坂ノ下商店に足を伸ばした。
烏養「あぁ、金はいい」
ガリガリ君をレジに持っていくと、そう言ってくれたので頭を下げた。
たまに割り引きしてくれたりこうして奢ってくれたりする。
烏養「その代わり……ちょっと話せるか?」
あなた「?はい。あ、煙草止めてくれたら話せます」
ビシッと指差すと、「わりいわりい」と灰皿に煙草を押し当てた。
レジ横に椅子を持ってきてくれて、そこに座ってガリガリ君を開けた。
烏養「お前は人よりもブロックの先が見える、って話は覚えてるな?」
球技大会の時、練習していた際に発見した私の知られざる才能。
あなた「はい」
烏養「あの時のお前と同じことを日向が言ってきたんだよ」
あなた「…………日向は、多分私よりも見えてます」
烏養「……!?」
あなた「もし、もし日向がカゲくんのトスを空中でさばけるようになったら……」
烏養「っ……いや、そんなもの机上の空論だろ……」
そう言いながら、もう一度煙草の箱を取り出したのでその手を叩く。
考え込むとすぐ煙草に手を伸ばす癖がある。
けしからんっ!
あなた「……でももし、できたら……」
烏養「………………むぅ」
煙草の箱をしまいながら唸るコーチ。
ガララッ
そこに丁度、日向が入ってきた。
日向「コーチ。俺はどう練習したらいいですか」
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えぐいってぇぇぇ!!
見て!一瞬こんなことになったの!!!
信じられなくて目がギンギンに冴えました😜
これもいつも読んで応援してくれる皆のおかげっ!
こんな私ですがこれからもお付き合いいただけると幸いです‥!❣️
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!