第392話

白鳥の妨害
33,962
2020/06/26 12:42
日向「もっかい……便所ぉ……っ、」



あなた「ちょ、平気!?」



アップがてら皆の調子を見ようと見回すと、やはり決勝。


取り乱しようがすごい……。




影山「センターコート……!」



……1人めっちゃキラキラしてるけど、。



あなた「カゲくんは緊張とか無縁だしね〜」


影山「及川さん以上に怖いことねぇだろ」


あなた「う……ん?」



昨夜のことを思い出して、胃がキリッと痛んだ。


勿論後腐れないような会話の終わらせ方をしてくれたけど、やっぱりあの出来事は私の中に鉛のように居続ける。





ドドッドンドドン!!


あなた「!」



「「「しーらとりざわっ!!」」」




太鼓が鳴り響き、白鳥沢のスタンドから応援の掛け声が聞こえてきた。




谷地「ぅわ……」


あなた「……出た」




いつも、あの応援が場の空気を持っていく。




「さぁ〜ぃきましょ〜」


「「「さぁ〜ぃきましょ〜!」」」


「さぁ〜ぃきましょ〜」


「「「さぁ〜ぃきましょ〜!」」」


「今日の〜相手はぁ〜っ」


「「「今日の〜相手はぁ〜っ!」」」


「烏野高校〜っ」


「「「烏野高校〜っ!!」」」


「よろしくよろしく〜」


「「「よろしくよろしく〜!」」」




菅原「すげぇな……」
 

東峰「流石強豪校って感じだわ……」


田中「そういえば……向こうのチームまだ来ませんね」


あなた「…………そろそろ来ますよ。あの人たちいつも遅めだから」  


東峰「なんだそれ……王者の貫禄ってやつかぁ?」


西谷「俺たちのこと、舐めてんすかね」




口々にピリピリした口調が飛び交う中、日向がドアの方に勢いよく振り向いた。



同時に、待ち構えていたかのようにドアが開き。



1番に足を踏み入れた若くん、そしてそれに続く天童さんたち。




会場が一気に盛り上がった。




来た……白鳥沢。




若くんの後ろの方で歩く工くんと、目があった。




五色「っ!!」



途端表情に花咲かせて口角を上げた。



……そうだ。私…………。




『それまでに、意識させてみせるから!』




五色くんの告白を断り切れてないまま(正確には断らせてもらえないまま)月島くんと付き合っちゃってるんだもんね……。




どうしよう、合わせる顔が_________。




小さく会釈をしてから、烏野のボールを拾いにその場から離れた。




仁花「あなたちゃん、コーチが呼んで__ひぃぃ!?」



あなた「??」



ボールを抱えた私の頭上を見遣ってガクガク震え始めた仁花ちゃん。



不思議に思って振り返りながら見上げたと同時に、ふわっと上着が顔面に覆いかぶさった。




あなた「ふぉっ、……?」




ボールを抱えているので剥がすことができず、片手に持ち替えているとその主は声をかけてきた。




?「レモンの蜂蜜漬け作ってくれタァ??」


あなた「……あぁ、天童さんか」



ならいいや、と、顔にかぶせられた上着を乱雑に床に落とした。




天童「ちょぉっ!?なんしてんのさっ」


あなた「あのねぇ今私マネージャーの仕事してるんです!」  



「邪魔しないでください」と口を尖らせてから、言伝通りコーチのところへ小走りで向かう。




と、立ちはだかるように進路上に居る若くん。


真っ直ぐに私を見据えた。





牛島「上でしっかり見ておくといい」


あなた「ところ……ね?」




にっこりと笑うと、心底不思議そうな顔で首を傾げるのでやっぱり若くんだなぁとしみじみ思った。



グイッ



あなた「!」


  
睨み合って(?)いた私達を離そうとしたのか、私の肩を掴んで強引に後ろに任せたのは工くんだった。




五色「……牛島さん!この決勝で、俺の方が(あなたに)相応しいと証明してみせます!」




お、いきなりどうした工くん……。


まぁ若くんに次期エースとして対抗心抱くのはいいことかもだけど……。



牛島「……(何の話だ?)あぁ、頑張れ」    


あなた「ちょ、チームの話私挟んでしないでよ……」



天童「プックク……!」


大平「この3人噛み合わないなぁ」



ん??


バレーの話……でしょ?
  


?「よぉ」


あなた「!」



さっきと同じように頭にジャージを被せられて、引き剥がしながら見上げると仏頂面の白布さん。




あなた「……こんにちは」


白布「……」
 


ジャージを軽くたたんで押し返すと、むすっとした顔で頬っぺたをつねってきた。




あなた「ぃひゃい いひゃいっっ、」 


白布「……今日、負けたらこっちに来ること許可してやる」


あなた「_________え?」




手首を掴んで抵抗していると、思いもよらない発言に場が静止した。



白布さんはやっぱりムスッとした顔で、「だから」と口を開ける。




白布「白鳥沢に、転校してくればいい」   



あなた「!!!?」


天童「んまっ!」


牛島「…………」    


五色「……!」






今まで、頑なに私のことを白鳥沢から遠ざけようとしていたというのに。



そして白布さんの爆弾発言は、烏野の____月島くんの所にまで、届いていた。
 

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