あなた「……」
照島「烏野かぁ。道理で……」
チラッと澤村先輩を見て、また私に視線を戻した。
母畑「おぉ、よく会うなぁ」
あなた「いや……私は特に会いたくないですけど」
照島「つれないこと言うなよ~!」
ガシッと肩を掴まれて、引き寄せられた。
田中「なっ、おい!!」
慌てて駆け寄ってくる田中先輩を見てから、ふっと笑った。
グイッ
あなた「!」
チュ……
頬に、ふわっと唇が触れた。
あなた「~っ、ちょ、やめ……___」
西谷「離せ」
照島さんの肩を掴んだ西谷先輩は、もう片方の手で私の腕を引っ張った。
その拍子に照島さんから離れて、距離をとった。
照島「……ふぅん?…………」
物色するように先輩を眺めて目尻を下げると、「またな」と言い残して帰っていった。
田中「あぁんだあの野郎……っ!」
影山「知り合いか!?」
あなた「え、えと……今日たまたま会って」
澤村「知らない男についてっちゃダメでしょうが!」
ついていってはないんだけど……。
山口「あ、日向と清水先輩、帰ってきましたよ」
怒られていると山口くんが指差して、田中先輩はすぐさまそっちを向いて叫びだした。
あぁ、また……。
いつものように、西谷先輩も清水先輩の所に行って……。
あの胸の痛さに襲われるんだ……。
グイッ
あなた「ふぇっ」
見たくなくて顔を伏せると、再度腕を引っ張られた。
引っ張ったのは西谷先輩で、スッと手を伸ばしてきた。
あなた「……?先輩?」
先輩の手のひらは、丁度照島さんにキスをされた頬に触れた。
西谷「……何回消毒させんだよ」
あなた「???……_____~っ、!?」
“消毒”
意味が分からず思考を巡らせた私は、今日の試合前の事を思い出した。
あれ、でもなんで唇に……。
先輩なチラッと月島くんのほうを見るので、その理由が分かった。
っ、あれ……見られてたの!?
昨日のあれを見られていたんだったら、今日の行動も府に落ちる。
まぁどうして消毒したのかは分かんないけど。
田中「ご無事で何よりですっっ!!」
皆の視線が清水先輩と、膝をつく田中先輩に集まる中で、私と西谷先輩だけが、ただお互いを見つめ合う。
西谷「…………気ぃつけろよ」
目をそらして、少しだけ頬を赤くしてそっと私の頭に手を置いた。
先輩に撫でられるのは、なんだかとてもくすぐったくて、同時に信じられないくらい幸せだった。
こんなの……期待しちゃうよ。
夕日に照らされて、先輩の顔がもっと赤く見えた。
きっと私も、顔真っ赤なんだろうな……。
ポコンッ♪
ポケットに入れていたスマホが振動し、電子音が鳴る。
取り出して通知を見て、画面を凝視した。
なんで……この人が?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。