あー……今日もぶつかれたりしないかな……。
昨日と同様、ジュースを買って角を曲がる。
今日はぶつからなかった。
代わりに、向こうから歩いてくる人影が1つ。
あなた「__________っ!」
タタッ
ガシッ
急いで反対方向に逃げようと足を動かしたのに、いとも簡単に捕まってしまった。
黒尾「は~い、逃げない逃げない」
あなた「っ、離せぇぇぇ」
やばいやばいやばい!
昨日みたいにまたあんなことされたら……。
黒尾さんは私の二の腕を掴んだままクイっと引き寄せた。
黒尾「………………チッ」
そして私の首筋を見て、舌打ち。
絆創膏を見られてしまった。
黒尾「お前なぁ……____」
?「何やってるんですか」
苛立ちを含んだ黒尾さんの声に、無機質な声が重なった。
あなた「、月島、くん……」
掴まれている私の腕を一瞥して、はぁ、と小さくため息をついた。
月島「黒尾さん、監督さんが探してましたよ」
黒尾「……りょーかい」
グイッ
あなた「ちょ……何で私までっ……!?」
1人で行けぇぇ!!
ガシッ
黒尾「……離せ」
月島「こいつを連れてく意味無いですよね?」
あろうことか月島くんが、私の反対側の腕を掴んで阻止してくれた。
黒尾「もう夜だし、部屋まで送るわぁ」
わざとらしい笑顔を貼り付けてそう言うと、月島くんも同じように笑顔を張り付けた。
月島「大丈夫です。僕が送るので、黒尾さんは監督さんのところへどうぞ」
黒尾「…………はぁ」
やっと折れたのか、力が緩んだ。
安心した瞬間、もう1度引き寄せられる。
ベリッ
あなた「っ!!?」
黒尾「……貼るの禁止な」
そう耳元で囁くと、月島くんに余裕そうな笑みを見せて帰っていった。
月島「ねぇ、昨日の事なんだけど……。?」
あなた「……う、うん?」
やばい。
あの人絆創膏剥がしやがった。
片手を押し当てて必死に隠し、そういえば今の私は月島くんとも少し気不味いんだと思い出した。
月島「ねぇ。首どうかした?」
あなた「!!?いや!?別に!!?っか、蚊に刺されたっ」
月島「………………ふーん」
危なかった……。
バレるところだった。
ガシッ
トンッ
あなた「_______え?」
私の答えを聞いて目線をはずしたのに、すぐに手首を掴んで壁に追いやってきた。
あなた「月島く……」
月島「どうしてそう、嘘が吐けないのかな?」
あなた「う、そ……って」
どうしたそんな、怒った顔……。
あなた「_____っ、や、止めてっ」
首に押し当てた手を引き剥がそうと掴まれて、抵抗虚しく首筋が露になった。
見られる……っ!
ギュッと目を瞑った。
月島「________、」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。