第208話

‥偽装工作‥
43,334
2020/04/08 22:45
あー……今日もぶつかれたりしないかな……。


昨日と同様、ジュースを買って角を曲がる。


今日はぶつからなかった。


代わりに、向こうから歩いてくる人影が1つ。


あなた「__________っ!」


タタッ


ガシッ


急いで反対方向に逃げようと足を動かしたのに、いとも簡単に捕まってしまった。


黒尾「は~い、逃げない逃げない」

あなた「っ、離せぇぇぇ」



やばいやばいやばい!

昨日みたいにまたあんなことされたら……。

黒尾さんは私の二の腕を掴んだままクイっと引き寄せた。



黒尾「………………チッ」


そして私の首筋を見て、舌打ち。

絆創膏を見られてしまった。


黒尾「お前なぁ……____」

?「何やってるんですか」


苛立ちを含んだ黒尾さんの声に、無機質な声が重なった。


あなた「、月島、くん……」


掴まれている私の腕を一瞥して、はぁ、と小さくため息をついた。


月島「黒尾さん、監督さんが探してましたよ」

黒尾「……りょーかい」

グイッ

あなた「ちょ……何で私までっ……!?」


1人で行けぇぇ!!


ガシッ


黒尾「……離せ」

月島「こいつを連れてく意味無いですよね?」


あろうことか月島くんが、私の反対側の腕を掴んで阻止してくれた。


黒尾「もう夜だし、部屋まで送るわぁ」


わざとらしい笑顔を貼り付けてそう言うと、月島くんも同じように笑顔を張り付けた。


月島「大丈夫です。僕が送るので、黒尾さんは監督さんのところへどうぞ」


黒尾「…………はぁ」


やっと折れたのか、力が緩んだ。


安心した瞬間、もう1度引き寄せられる。


ベリッ


あなた「っ!!?」


黒尾「……貼るの禁止な



そう耳元で囁くと、月島くんに余裕そうな笑みを見せて帰っていった。




月島「ねぇ、昨日の事なんだけど……。?」


あなた「……う、うん?」


やばい。

あの人絆創膏剥がしやがった。

片手を押し当てて必死に隠し、そういえば今の私は月島くんとも少し気不味いんだと思い出した。


月島「ねぇ。首どうかした?」

あなた「!!?いや!?別に!!?っか、蚊に刺されたっ」

月島「………………ふーん」


危なかった……。

バレるところだった。


ガシッ

トンッ


あなた「_______え?」


私の答えを聞いて目線をはずしたのに、すぐに手首を掴んで壁に追いやってきた。


あなた「月島く……」

月島「どうしてそう、嘘が吐けないのかな?」

あなた「う、そ……って」


どうしたそんな、怒った顔……。


あなた「_____っ、や、止めてっ」


首に押し当てた手を引き剥がそうと掴まれて、抵抗虚しく首筋が露になった。


見られる……っ!


ギュッと目を瞑った。


月島「________、」

プリ小説オーディオドラマ