第346話

嫉妬と怒りと恋心
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2023/05/10 07:48


あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°






黒尾「_____ふざけんな、」




ドサッ




あなた「っ、痛ぅ……」



突然の事過ぎて、状況が理解できなかった。


気が付いた時には私の背中は畳に重なっていて、黒尾さんの顔が目に入る。



唇を噛み締めて、心の底から怒っているような……。





あなた「く、ろ…………」


黒尾「お前が」



ギリッ





あなた「っ、」



両手首を力強く掴まれて、抵抗しようと崩した脚の間に膝を付かれた。






黒尾「西谷を……忘れるためなら」


あなた「……」








そうだ。私は……忘れるために、“利用”した。







黒尾「____相手は俺でもいいだろ」


あなた「!?~っ、……んん"っ、」







見たことのない、何も映ってないような目……。




狂暴な狼に睨まれたかのように恐怖が襲ってきた。



そして、落とされた唇が重なって。




月島くんとは違う、でも軽いキスを繰り返す。







あなた「んぅっ、ん、~っ、ちょ、黒、」







重ねる度に、少しずつ体が密着していって。


黒尾さんのがっしりとした大きな体に覆い被されて、身動きがとれない。


休む暇なく落とされる唇に息が苦しくなって、小さく口を開けると待ち構えていたかのように侵入してきた。






あなた「~っ!?ん……、!?」







熱い。




触れているところも、交わる舌も。




乱暴過ぎるほどに激しいキスに、もがく度にそれは増していく。






黒尾「はぁっ、……忘れてぇなら、俺にしろよ」


あなた「っ……、」








苦しくて、ぞくぞくして、視界がぼやけて……。



ようやく解放された両手を動かしたいのに、力が入らない。




黒尾さんは私を見下ろして、形のよい唇を舌でなぞった。








黒尾「こんなんでとろけそうな癖に……」


あなた「ふ……ぅ、はぁ……はぁ……、」








こんなの……知らない。


こんな、怖くて、苦しくて、熱いキス……。







あなた「ゃ……も、やめて、…………よ、」







再度落とされそうになった唇を前に、脱力して閉じきれない目から涙が溢れた。







黒尾「、煽ってるようにしか思えねぇよ」


あなた「ちがっ、ぅ……」



黒尾「気持ちに嘘ついて他のやつと付き合うなら、もう俺も遠慮しねぇからな」



あなた「……ぇ?」







遠慮、って……。



黒尾さんは今度は、軽く触れるだけのキスをしてから首元に顔を近付けた。







黒尾「お前こと好きなのは……月島あいつだけじゃねぇんだよ……」



あなた「…………、」








ねぇ、黒尾さん……。


気のせいじゃないよね……?




例外なく火照った首筋に、つぅ……と冷たい液体が通って。









あぁ私は…………。







傷つけてばかりだ。








ごめんね、黒尾さん……。











ごめんなさい。





私なんかが……こんな。


















あなた「さい…………めんな、さい……ごめんなさい……




黒尾「_______っ、」





気が付いたら私も、涙で溢れていて。



バッと顔を上げた黒尾さんの目元は微かに赤くて。




私が……傷つけた。




だから私が泣いたら……ダメなんだ。




あなた「グスッ…………黒尾さ……ひくっ、ごめん、なさい……」



黒尾「~っ、!」




ハッとした顔をしてから、密着した体を少し浮かせた。




でももう、起き上がる力なんて無くて。





黒尾「_______、わりぃ……」



優しく頭の後ろに手を添えて、体を起こされた。


拍子に抱き締められて……息が整うのに、時間を要した。





黒尾「………………怖かったよな」



背中をポンポンとさすられて、訳が分からなくなってまた視界が滲んだ。


震える肩が、おさまらない。



黒尾「……やっぱり、」



黒尾さんの声も、震えていて。



黒尾「____俺にしてくれ……頼む、から」



黒尾さんの、こんなにも細く弱々しい声を聞くのは初めてだ。







あなた「……………………ごめ、なさい」








小さく動いた口からは、それでも尚そんな言葉しか出てこなかった。





そんな言葉しか、言えなかった。

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