黒尾「厄介……?」
赤葦「烏野の9番10番が参戦してから、明らかに攻撃に幅が出てました」
木兎「あの攻撃意味わかんねぇよなぁ」
赤葦「でもそれだけじゃない。お2人も気付きましたよね?あのあなたって子……今日半日ずっと黙って試合を凝視していました。それこそ、研磨が普段試合中にするように……いや、それよりもっと高密度に」
……確かに、前の合宿の時にもあったな。
あいつにはバレーを見る目がある。
前はまぁまぁ荒削りで自信なさげだったけど、今日の試合中ずっと嫌な気分だった。
敵にしたくないと思った。
木兎「言ってたなぁ強羅や小鹿野。「あの子に試合見られるのが嫌だ」って」
木兎の言葉に頷いた赤葦は、再度俺を見た。
赤葦「あの子……何者なんですか?」
黒尾「…………さぁな。とにかく、」
正直、俺にも分かんねぇ。
この短期間であんなに変わるものなのか?
なにか大きなことがあいつに起こったのか?
あいつに「見る」才能があるのは知っていたけど、それが開花しそうになっていると思うと……。
黒尾「……いやだねぇ」
あなた𝓈𝒾𝒹𝑒.°
リエーフ「ごほぅぉっ!」
あなた「ほらもう!打ってって言ったのリエーフくんでしょ!?さっさと立つ!!」
ボールを打つことに関しては自信があったし、お願いされてレシーブ練に付き合うと始めてすぐリエーフくんの顔はみるみるひきつっていった。
夜久「ぷぷっ……リエーフ女子に負けてんぞ!」
リエーフ「うるさいですよもうっ!!」
しこたま練習してから、そろそろ夜ご飯を食べに行こうとネットを片付けた。
あなた「そういえば、ご飯って誰が作ってくれるんですか?」
夜久「食堂のおばちゃん的な人だな」
3人で外を歩きながら食堂に行く。
もうすっかり日が沈んで、月明かりが足元を照らしている。
夜久「美味しいけど、俺はあなたの飯が食いてぇ」
あなた「っ!」
夜久さんって、素でこういうこと言っちゃうんだもんなぁ。
リエーフ「あなた、飯作るのうまいのか!?」
リエーフくんが食い気味で聞いてきて、夜久さんが答えた。
夜久「上手いなんてもんじゃねぇぞ。それで食っていけるレベルっ」
あなた「そんなっ、褒めすぎです……」
素直に照れてしまって、熱くなった頬を仰いだ。
リエーフ「俺も食いたいなぁ……あっ、黒尾さんたちだ!一緒に飯行きましょうよ~っ」
第3体育館から出てきたのは、何か言い合いをしている黒尾さんと木兎さん、それを真顔で見ている赤葦さんだった。
こっちに気がつくとすぐに向こうも手を振る。
木兎「おぉっし!あなた!!行くぞ!」
あなた「ふぇっ」
ガシッと肩に手を回された。
この人のパーソナルスペースどうなってんだ……。
黒尾「あなた~」
木兎さんに苦笑していると、黒尾さんが目の前に立った。
黒尾「今日の約束、やっぱいいから」
あなた「……?はい」
そういえば、研磨くんもそう言ってたような。
2人、何か話したのかな?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。