体育祭。
文化祭と並ぶ大きな行事だ。
勿論楽しみなんだけど……それよりもっと。
西谷先輩と……初めての行事だ。
綾乃「あなた……?あなた!?」
あなた「!なに!?」
またトリップしてた……。
緩んだ頬をぱちぱちと叩いて綾乃の方を向くと、メンバーの用紙を指差した。
女子と男子別れて出場種目について話し合っている。
綾乃「クラス対抗リレー!出てもらえる?」
あなた「え……私!?」
クラス対抗リレーって、男女混合のやつだよね……?
名物の1つじゃなかったっけ……そんなのに私が出ていいのかな?
綾乃「あなた50メートル走クラスで1番速いし!誰も文句ないよ!」
あなた「うぅ……私バトン渡すの苦手なんだよね……」
さくら「大丈夫!!練習すればなんとかなるよ!」
断りにくくて、半強制的に出場することになった。
私が出場するのは、クラス対抗リレー、それからブロック対抗リレー。
リレーばっかり……借り物競争とか出たかった……。
午後からのブロック別会議で各種目の顔合わせだ。
山口「あなたちゃん、何出ることになったの?」
あなた「えっと、クラス対抗とブロック対抗!」
席に戻って尋ねられ、答えるとやっぱり月島くんがバカにしてきた。
月島「君からバトンもらう人可哀想~」
山口「もう、ツッキー……。ちなみに、何走目なの?」
あなた「ん、一走!」
月島「え」
あなた「え?」
なに、この反応……まさか。
山口「確かツッキー、2走だよね?」
絶対に失敗できないバトン渡しが、今目の前に。
さくら「ブロックって縦割りなんだよね~」
綾乃「んで?2・3年にめぼしい人は?」
「めぼしい人」つまり、イケメン。
ブロック別会議に向かいながら、聞かれたさくらは嬉しそうに目を輝かせた。
さくら「勿論山ほど!!なんと言っても4組には____」
?「おーーーっす。宿題終わったかぁ?」
肩に手を回されて、危うく階段から落ちそうになった。
あなた「ほわっ、……菅原先輩……」
誰かと思った……。
ん?
多目的ホールに向かってるってことは……。
菅原「あなたも4組だったなぁそういや」
あなた「あぁ、菅原先輩も……」
なんか、部活の人と同じブロックって嬉しいなぁ……。
……一瞬、西谷先輩がいることを期待したけど。
4、5組進学クラスだからなぁ……。
失礼か。
あなた「っ、げぇ……」
ひょこっと菅原先輩の横から顔を出したその人に、思わず声が漏れた。
澤村「なんだってぇ……??」
グググッ
菅原先輩から私を引き抜くと、首に腕を回してくる。
あなた「ちょぉぉぉ!ギブぅぅ!」
澤村「「げ」ってなんだよ!!」
あなた「だって先輩、私がバトン落としたら絶対怒るもんんん!!」
菅原「落とす前提なんだな……」
それから、縁下先輩と成田先輩も同じブロックだと言うことが判明。
お父さんが2人と、お母さんまで……。
やばい、失敗できないよ……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。