夜久「そういえば黒尾、あなたのこと認める認めない言ってたよなぁ~」
ご飯を食べながら夜久さんが笑った。
海「言ってたな」
犬岡「認める要素しかなくないですか?もう。こんないいマネージャー他にいませんよっ」
研磨「……クロ、どうなの」
皆の追及に、黒尾さんは目を泳がせた。
どうなんだろう……。
認めてほしい。
私が来てくれて良かったって、言わせたい。
その思いで頑張ってきたんだ。
黒尾さんは箸を置いて私を横目で見た。
黒尾「……俺は、認めてねぇ」
研磨「あなた、気にすることない。クロは意地張ってるだけ」
あなた「……んぅ」
黒尾さんは、さっさと食べ終わっていち早く部屋に戻った。
悔しくて、悔しくて、私はアップルパイを頬張る研磨くんの肩に顔を埋めながら、滲んでくる涙を隠した。
明日には、烏野に戻ってまた皆と一緒に居られる。
それは勿論嬉しいけど、元はと言えば私が音駒に来たのは清水先輩を狙った黒尾さんのせいであって、西谷先輩のために烏野から離れた私を、黒尾さんが認めてくれないと私があんな思いをした意味がなくなってしまうような気がした。
研磨くんや、皆と会えて一緒に過ごしたのは楽しかったし、もう一度やり直せるとしても私は音駒に来るだろう。
それでも、黒尾さんに認めてもらいたい。
自分の中のよく分からない複雑な気持ちがぐるぐる駆け巡って、お風呂に行って部屋に戻って休むことにした。
……ジュース、買いに行こう。
なぜか皆、夜皆で遊ぶのはダメだと言ってきたのでとても暇だ。
自販機に足を運んでいると、ばったりと会いたくない人に遭遇した。
黒尾さん……。
黒尾「……」
あなた「……」
私が音駒に来たときのバチバチが、お風呂で溶けて一瞬消え去って、それでもさっきの黒尾さんの発言でまた元に戻ったようだった。
私がジュースを買っていると、黒尾さんはなぜか足を止めてこちらを見ていた。
視線が気になりながらもジュースを買って、黒尾さんに目を向けないように部屋に戻ろうとした。
黒尾「聞きたいことがある」
そう言った黒尾さんに足を止め、顔は向けずに耳だけ傾けた。
黒尾「あの眼鏡ちゃんの代わりに、こっちに来たのはなんでだ?」
あなた「……」
予想外の質問に、言葉を失った。
黒尾「……答えないってことはお前、追い出された?烏野」
あなた「……違う」
黒尾「じゃあ、なんで?」
あなた「清水先輩は…………マネージャーとしても勿論だけど、それだけじゃない。清水先輩自身が皆から必要とされてたから」
黒尾「お前は必要とされてなかったの?」
あなた「……知らない」
黒尾「あぁ、分かった。お前、自分が抜けることで必要とされてるって実感したかったんだろ」
黒尾さんが、分からない……。
どうしてそんなにも、私を嫌うの……?
どうしてそんなにも……私が言われたくない言葉が、分かるの……?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。