月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°
自分が柄にもなく、大声を出した喜んでいたことに驚いた。
西谷さんと田中さんが飛び付いて来て、やっと我に返った。
澤村「月島!ナイスブロック!!」
東峰「よく止めたなぁ!」
月島「僕レベルのブロッカーくらい、今までもいたはずです。でも、西谷さんのレシーブや、変人コンビのブロックガン無視攻撃が、向こうのセッターへのプレッシャーになってくれたと思います」
……癪だけど、認める他ない。
西谷さんも王様も、その技術を認めざるを得ない。
……でも。
東峰「そんな事まで考えてたのかよ……」
澤村「怖っ、月島怖っ!」
決めたんだ。
あの夏の日。
山口が、初めて僕に突っかかってきた日。
自分のカッコ悪さを自覚して、それと同時にあなたへの気持ちもスッと胸に入ってきた。
『逃げてるだけ』と、あなたは僕に言った。
その通りだったから、喧嘩みたいになってしまって。
どうせ、西谷さんが好きだから……西谷さんと、西谷さんのバレーが好きだから……それを押し付けてるだけだって勝手に解釈して、勝手にキレて。
だけどもう、それでもいい。
今まだ、あなたは西谷さんのバレーを好きだと言っても、それでもいい。
僕は、僕のバレーで……あなたに、好きだって言わせてやりたい。
だからもう逃げないって、決めたんだ……。
あなた「月島くん〜!!!!」
月島「……っ」
多くの歓声に紛れて、その声は確かに僕に届いた。
ゆっくりと顔を上げると、ピョンピョン飛び跳ねている僕の"彼女"。
……横で慌ててしゃがんだ不審者は後で突っ込むとして。
あなたは満面の笑みを浮かべて、僕に____僕だけに、あの透き通るような声を響かせた。
あなた「ナイスブロック!!!」
単純な、その一言が……。
僕にとっては案外、心に響いたりするんだよ。
月島「_________ん」
突き出した小さな拳に応えるように軽く伸ばすと、頬を赤らめてはにかんだ。
白布𝓈𝒾𝒹𝑒.°
あなた「月島くん〜!!!」
烏野の11番へ歓声を送るあいつは、心無しか他の奴へのそれよりトーンが上がっている気がして。
こんな時でも、そういう事を考えてしまう。
だって俺のバレーは……あいつが認めてくれた、バレーだから……だから、どうしても、胸を張って見せられるものにしたいんだ。
天童「賢二郎生きてる〜?」
白布「これが練習試合だったら、往復ビンタでした」
天童「ソォか?ミスってほど悪いトスでもなかったし、よくある事じゃんかァ」
白布「……今のは単なるミスではないんです」
『何か好きなことに一生懸命になってる時が、その人が1番輝いてる時だと思うから』
俺は俺のバレーを……貫く。
パシッ!!!!!
思いっきり両手で頰を叩いて、気持ちをリセットした。
あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°
3セット目。
白布さんは2セット目を引きずる様子を見せず、どんどん目が据わっていっている。
若くんも火力が増していって、18対25で取られてしまった。
月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°
コートチェンジ中、牛若が日向にすれ違いざまに話しかけた。
牛島「あんな動きをするなら、きっとレシーブもブロックも上手いのだろうと思っていた。高さで勝負できないのに、技術も稚拙でどうするんだ」
……凄い言われようだね、まぁ事実だけど。
落ち込んでいる日向に背を向けると、牛若は聞こえるか聞こえないくらいの呟きを溢した。
それが丁度、僕とすれ違う時で。
牛島「______つくづく、あなたが烏野に行った意味が理解できない」
………………あなた?
思わず振り向くと、僕を一瞥してスタスタと歩いていった。
……なんだよ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。