第398話

決めたんだ
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2020/07/17 09:01
月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°



自分が柄にもなく、大声を出した喜んでいたことに驚いた。


西谷さんと田中さんが飛び付いて来て、やっと我に返った。




澤村「月島!ナイスブロック!!」


東峰「よく止めたなぁ!」


月島「僕レベルのブロッカーくらい、今までもいたはずです。でも、西谷さんのレシーブや、変人コンビのブロックガン無視攻撃が、向こうのセッターへのプレッシャーになってくれたと思います」




……癪だけど、認める他ない。


西谷さんも王様も、その技術を認めざるを得ない。



……でも。




東峰「そんな事まで考えてたのかよ……」


澤村「怖っ、月島怖っ!」





決めたんだ。


あの夏の日。



山口が、初めて僕に突っかかってきた日。



自分のカッコ悪さを自覚して、それと同時にあなたへの気持ちもスッと胸に入ってきた。





『逃げてるだけ』と、あなたは僕に言った。





その通りだったから、喧嘩みたいになってしまって。




どうせ、西谷さんが好きだから……西谷さんと、西谷さんのバレーが好きだから……それを押し付けてるだけだって勝手に解釈して、勝手にキレて。




だけどもう、それでもいい。




今まだ、あなたは西谷さんのバレーを好きだと言っても、それでもいい。




僕は、僕のバレーで……あなたに、好きだって言わせてやりたい。





だからもう逃げないって、決めたんだ……。






あなた「月島くん〜!!!!」



月島「……っ」





多くの歓声に紛れて、その声は確かに僕に届いた。



ゆっくりと顔を上げると、ピョンピョン飛び跳ねている僕の"彼女"。


……横で慌ててしゃがんだ不審者は後で突っ込むとして。





あなたは満面の笑みを浮かべて、僕に____僕だけに、あの透き通るような声を響かせた。






あなた「ナイスブロック!!!」






単純な、その一言が……。




僕にとっては案外、心に響いたりするんだよ。







月島「_________ん」





突き出した小さな拳に応えるように軽く伸ばすと、頬を赤らめてはにかんだ。





白布𝓈𝒾𝒹𝑒.°




あなた「月島くん〜!!!」




烏野の11番へ歓声を送るあいつは、心無しか他の奴へのそれよりトーンが上がっている気がして。



こんな時でも、そういう事を考えてしまう。




だって俺のバレーは……あいつが認めてくれた、バレーだから……だから、どうしても、胸を張って見せられるものにしたいんだ。





天童「賢二郎生きてる〜?」


白布「これが練習試合だったら、往復ビンタでした」


天童「ソォか?ミスってほど悪いトスでもなかったし、よくある事じゃんかァ」


白布「……今のは単なるミスではないんです」





『何か好きなことに一生懸命になってる時が、その人が1番輝いてる時だと思うから』





俺は俺のバレーを……貫く。





パシッ!!!!!




思いっきり両手で頰を叩いて、気持ちをリセットした。



あなた 𝓈𝒾𝒹𝑒.°



3セット目。

白布さんは2セット目を引きずる様子を見せず、どんどん目が据わっていっている。


若くんも火力が増していって、18対25で取られてしまった。



月島𝓈𝒾𝒹𝑒.°



コートチェンジ中、牛若が日向にすれ違いざまに話しかけた。




牛島「あんな動きをするなら、きっとレシーブもブロックも上手いのだろうと思っていた。高さで勝負できないのに、技術も稚拙でどうするんだ」



……凄い言われようだね、まぁ事実だけど。


落ち込んでいる日向に背を向けると、牛若は聞こえるか聞こえないくらいの呟きを溢した。


それが丁度、僕とすれ違う時で。





牛島「______つくづく、あなたが烏野に行った意味が理解できない」





………………あなた?





思わず振り向くと、僕を一瞥してスタスタと歩いていった。












……なんだよ。

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