あなたへ
まず、あの日、あんな酷いことを言ってごめん。
でも、嫌いだから別れたんじゃない。
俺、あなた以上に好きな人いない。
じゃあ、なんで別れたんだよっ!って感じだよな 笑
あなたと付き合って1か月後、母さんと父さんの話を聞いた。
珍しい病気だったらしい。もう、余命わずかだって聞いた。
あなたと付き合ってて楽しかった。
幸せだった。
まだまだ生きたいって思ったんだ。
でも、手術をしても治らない。
だんだんめまいや吐き気が頻繁に起こるようになってきて、何度か倒れたときもあった。
このまま、あなたと付き合っていたらあなたを悲しませることになる。
苦しませるかもしれない。
俺が死んだら、あなたは一人で傷つく。
まあ、どっちにしろ、傷つけたか。
ごめん。
でも………少しでも傷が浅くなるんなら、別れよう。
そう思った。
もっと早く言ってくれれば…って思ってる?
そうだな。
病気のこと言っておくことも出来た。
でも、俺は言えなかったんだ。
あなたが毎日、笑顔だから。
あなたにはずっと笑顔でいてほしいから。
あと、病気のことを言えば、あなたは自分のこと以上に心配するだろ?
だから、あの日、別れを切り出した。
俺も苦しかった。
本当は別れたくなんてなかったから。
ずっと一緒に居たかったから。
ごめんな。
俺、学校を休みがちになっただろ?
あれも病気のせい。
病院で過ごすことが多くなったから。
学校に行っても具合が悪くなって保健室に行ってた。
病気のことは誰にも話してなかったんだ。
俺はあなたと付き合えて幸せだった。
で、あのときあなたは簡単に別れてくれないだろうって思って、本当は大好きなのに嫌いって言ってしまった。
ごめん。最低だな。
辛い思いさせてごめんな。
謝りきれないぐらい、あなたのこと傷つけたな。
ごめん。
そしてありがとう。
ここで俺のことは忘れろ………とは言えない。
俺のこと、少しでもいいから、覚えといてほしい。
ほんの少しでいいから。
東京にはいいやついるか?
あなた、幸せになれよ。
幸せになってくれ。
頼む。
あなたの幸せを誰よりも願ってる。
じゃーな。
翼
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。