体育館に行くと、瑠偉先輩がいた。
「先輩……」
「あ、あなたちゃん?」
「ちょっと話があって。」
先輩はドリブルをやめて、こっち来て座る。
「で?話って何?」
「咲ちゃんのことなんですけど………」
咲ちゃんと言うと、先輩の目から涙のしずくが落ちた。
「………沙耶から聞いた?」
「はい……」
「俺さ、咲が死ぬ前の日にひどいこと言ったんだよね。」
「ひどいこと?」
「別れようって……言ったんだ。」
え……?
「俺、咲が苦しんでるの見てさ、俺のせいってわかって……別れようって言った。」
「咲ちゃんは……?」
「そうだねって……もうそんときには覚悟決めてたのかな………」
じゃあ、咲ちゃんが亡くなる前に別れてたの………?
「先輩………手紙見ました?」
「実は……見てない。」
え?
「怖くてさ。開けれないんだ。でも、いつもカバンに入れてる。」
「咲ちゃんの手紙……読んであげてください。」
「じゃあ、今から着替えるから昇降口で待ってて。」
「はい。」
瑠偉先輩……手紙、読んでないんだ………
「お待たせ。じゃあ、読もうか。」
「いいえ。まずは先輩一人で読んでください。」
「え?いや、一緒に読んでほしいんだけど。」
うーん………
「分かりました。」
先輩は手紙を取り出して、私にも見えるようにしてくれた。
”瑠偉くんへ
瑠偉くん、今までありがとう。
本当に幸せでした。
感謝してます。
私が自殺してどう思ってますか?
少しでも悲しんでてくれるんなら嬉しいです。
私は、瑠偉くんの本当の気持ちを知っています。
瑠偉くん………愛美さんのことが好きなんでしょ?
瑠偉くんは隠してるつもりかもしれないけど、わたしには分かるよ。
私が告白したときを覚えていますか?
泣きながら告白しちゃったの、覚えてる?
今、自分でも思い出すと恥ずかしいな。笑
あれから、だんだん瑠偉くんの気持ちが離れてくのが分かったの。
でも、怖かった。
それを認めるのが。
そして、別れようって言われたとき、何かホッとした。
瑠偉くん、ちゃんと愛美さんに想い、伝えてね。咲”
瑠偉くんの目からは涙が流れていた。
「あなたちゃん、ありがとう。やっと読めた。」
「いいえ。愛美先輩に……」
「伝えてくる。ありがとな。」
ここで……私の恋も終わりだね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!