第16話

放課後
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2019/10/03 12:36
授業にも全く集中できず、放課後になった。


頭の中は翼…だけ。

全く吹っ切れてないな。



下駄箱まで来ると、スマホを忘れたことに気がついた。


戻るか…


放課後の教室…


いつもは騒がしいこの教室が、今は静かだった。

当たり前か。



私は椅子に座り、机の上に頭を乗せて翼のことを考えていた。


あの手紙をかばんから取り出す。


涙が止まらない。


私は翼のことを忘れるなんてできないよ…



「橋本…?」


野村くん?


いやっ。今の見られてた?


それに、こんなひどい顔見せられないよ。


「橋本…何も話さなくていいから。」


そういって、野村くんはなにかを探していた。


私も落ち着き、帰ろうとしたとき


「橋本…この前のことだけど。」


「あ……あの、ね、」


「いいから。」


「え?」


「今、苦しいんだろ?だったら、橋本が落ち着くまで待つ。
返事は橋本が落ち着いてからでいい。」


野村くんはどこか翼と似ているように感じた。


「野村くん…ありがとう。あのさ、話聞いてくれる?」


「え?」

なんだか今、一人で抱え込んでると変になりそうだったから。

聞いてもらいたかった。

誰かに、私の気持ちを。


「私はこっちに来る数ヵ月前、翼…元カレに振られた。

大嫌いだって。

その翼がおととい、亡くなった。珍しい病気だったんだって。

私を悲しませないために、別れたらしい。

正直、全然吹っ切れてなかったんだよね。翼のこと。

でも、手紙には幸せになってくれって書いてた。最後の願いだって。

だったら、その願いだけでも叶えてあげようって思った。

でもね…

野村くん…の気持ちも嬉しいけど、まだ好きじゃない人に付き合うのも申し訳ないから…」


「じゃあ、待つよ。ずっと待つから。」


「え?」


「だから、俺のこと、好きになってくれるまで待つから。」


「え?」


「いつも通りでいい。俺のこと好きになったら言って?」


「う、うん。」


「あと、野村くんじゃなくて瑛斗って呼んでほしい。それと、あなたって呼んでいい?」

「え!?う、うん。」

「強引で急だけどごめん。」

「いいよ。」

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