「ねーねー、あなたはさ、その翼くんには未練ないの?」
「未練…か。あるよ。
でももうこの世界にはいない人になっちゃったから。」
「え…?」
そういえば美織と沙耶にはこの話してなかったんだっけ。
私はあの二日間であった出来事を全て話した。
「そう…だったんだ。ごめん。」
「いいの。でも、今恋愛はちょっと…」
「野村は?」
「そういえば、朝、瑛斗って言ってなかった?」
「あぁ。」
昨日のことも全部話し、
「私は野村のこといいんじゃないかなって思うけどな。」
「まあねぇー。
ごめん。話変わるけどさ、私、琉斗くんに告ろうと思うんだ。」
確か…美織が好きって言ってた人だよね。
「頑張れ。」
「ファイトー」
「何よぉ!そのファイトーって運動部のいつものかけ声じゃん!」
ふふ。
みんな恋してるな……
たった一度きりの青春……だもんね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!