竈門炭治郎side
俺のヒノカミ神楽とあなたさんの血鬼術で何とか無惨は斬れた。
皆の援助もあって。
しかし本当の悪夢はそこからだった。
無惨の身体が砕け散る前にあなたさんを体内に取り込もうとする。
あなたさんは俺たちに向かって叫んだ。
逃げろ、と、。
状況が理解できなかった、それに加えて全身の疲労が比ではない。
上手く、立ち上がれない。
やがて無惨は細胞からバラバラになって、消えた。
その場には下を向いた状態で立つあなたさんが居て。
俺は直ぐに駆け寄った。
この時既に俺は気が付いていた。
あなたさんから、微かにあった人間の匂いが無くなった事に___
善逸がこちらに向かって叫ぶ。
そうだよな、善逸も分かってるよな。
あなたさんが完全に鬼になったこと____
無惨よりも濃い鬼の匂い。
ただし人間を喰っていないから悪臭では無い。
だからと言って今のあなたさんは完全に自我を失っている。
ドンッ
気付いたら俺はあなたさんに押され、壁に固定されていた。
なんの光も映し出さないような真っ黒な目。
俺はその時、不思議な事に気がついた。
小刻みにあなたさんの匂いが変わってる。
人と鬼が交互に____
ふと顔を上げるとあなたさんは泣いていた。
今の匂いは人間……
沢山助けてもらった。
沢山笑った。
沢山話した。
沢山、沢山、沢山_____数え切れないほど。
斬ろうとしても手が震えて上手くできない。
斬れない、斬りたくない、。
ドンッ
再び鈍い音がした時、あなたさんは俺から勢いよく離れた。
今度はまた鬼の音になってる____
善逸は、自我を失い鬼になったあなたさんを抱き締めた。
強く、離さないように______
善逸はそう呟くとあなたさんの背中に何かを突き刺した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!