第10話

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2022/09/13 08:04



   6月今年もやってきた 。

   私が一年の中で最も嫌いな季節 。
   じめついた廊下にまとまらない髪 。


   今も空は音を立てて水を落としている 。


   「 雪村って 、
     確か部活入ってないよな ?

     悪いけどこれ 、バレー部の須藤先生に
     渡してきてくれないか 。」


   帰ろうとしていたその時 、
   担任に呼び止められる 。

   聞けば 、先生は今から大切な会議なんだとか 。
   それでこれは至急の書類なんだ 、とか 。


   ついてない 、今日は湿気で髪はボサボサだし 、
   蒸し暑い 。

   職員室に行けば 、先生は体育館だとか 。



あなた 「 ... めんどくさい 。」


   今日は早く帰りたかったのに 。

   体育館に向かうには
   屋根付きの渡り廊下を
   渡らないとならないのに 。


   今日は雨だから 、
   多分横からの雨で濡れてしまう 。



   「 あなた 。」


あなた 「 ... っ 、」

 

   渡り廊下へ足を踏み出そうとした時 、
   
   ふと呼ばれた名前 。大好きだった声 。

   いつぶりかに聞いた
   大好きな声に乗った私の名前 。


   「 、、、 その 、久しぶり 。
     元気だったか 、あのっ 、」


   声に反応して振り向けば 、あたり 。

   以前より少し伸びた背に 、
   変わらない少しの癖毛 。


   「 本当に 、悪かった 。
     ずっと謝ろうと思ってたんだ 。
   
     あの日からお前俺のことずっと避けてただろ ?
     って 、そりゃそうだよな 。」


   視線が交わって 、
   焦点が合うと気まずそうに俯いた 。


   「 本当に 、悪かった 。傷つけた 。」


   彼が私の前で頭を下げる 。


あなた 「 … うん 。」


   いやだ 、お願いだから頭を下げないで 。

   その頭を上げて 、
   もっと私が傷つく言葉を放ってほしい 。

   私に謝らないで 。反省なんかしなくていい 。
   あんな奴遊びだよって 、笑って欲しいい 。

   私のことなんてほっといて 。


   「 … 唇 、噛まないでよ 。
     拳もそんなに強く握らないで 。

     ってそうさせてんの俺だよな 。

     言いたいこと我慢してる時のあなたの癖 。」


   きゅうと噛んだ唇に 、
   痛いくらいに握っている拳も気づかないで 。


   
あなた 「 … ごめん 。」


    「 なぁ 、俺お前のこと本気で好きだったよ 。」


   やめて 、そんなふうに言われたら 。

   あの日 、高橋くんがせっかくしてくれた蓋が
   コトコトと音を立ててこじ開けられる 。


   彼の唇によって塞がれた気持ちが 、
   溢れていく 。





   蓋してた気持ちが溢れてくる 。

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